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日本人の平均年収は30年間ほぼ横ばい…それでも「給料が上がらない=悪」とは言い切れない“納得の理由”

『知らないと恥をかく世界の大問題13』より #1

2022/06/11
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自民党の保守本流「宏池会」とは

 日本では、久々に宏池会出身の首相が誕生しました。2000年代はずっと清和会系の首相が続いていたので、本当に久しぶりです。

 自民党がなぜ長期政権なのかというと、いろいろな派閥があり、自民党内での疑似的な政権交代が起きてきたからです。いわば自民党内に「二大政党」があるのです。

 ここで自民党の「派閥」の流れを振り返ってみましょう。

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 自民党にはいろいろな派閥がありますが、戦後、大きく2つの流れがあると考えていいと思います。

 吉田茂がトップだった「自由党」の流れと、鳩山一郎がトップだった「日本民主党」の流れです。2つの党は、お互い「どんな資本主義を目指そうか」というところで考え方が違ったので、対立していました。

 ところが、それまで「右派」と「左派」に分かれていた日本社会党がいっしょになったため、このままでは社会党が勢力を伸ばして日本が社会主義の国になってしまう恐れがあると心配した財界が、「保守もいっしょになれ」と圧力をかけ合同が実現しました。新しい政党名が「自由民主党」でした。

2021年総裁選挙に出馬した岸田、河野、高市、野田は…?

 もともと自由党と日本民主党は、それぞれどんな考え方だったのか。

 まず自由党の吉田茂は、簡単にいえば、「日本は日米安保条約を結んでアメリカに守ってもらうことで軍事費の支出を少なくし、経済を発展させよう」。あるいは「社会保障を充実させていこう」という考え方です。吉田派はいろいろと枝分かれしていくのですが、主な歴代総理大臣の名前を挙げると、池田勇人→佐藤栄作→田中角栄→大平正芳→宮沢喜一の源流です。

 一方、日本民主党の鳩山一郎は、「憲法を改正し、再軍備をして、強い軍隊も持つべき。社会保障は自助で」という考え方です。こちらから総理大臣になった主な顔ぶれを見ると、岸信介→福田赳夫→小泉純一郎→安倍晋三と続きます。

 ちなみに2021年に行われた自民党総裁選挙には、4人が出馬しました。岸田文雄、河野太郎、高市早苗、野田聖子です。こうしてみると、岸田氏と河野氏とは対立しているように見えますが、もとは両氏とも自由党の吉田茂の流れを受け継いでいる政治家ですし(河野氏は、吉田茂の孫である麻生太郎氏の麻生派に所属)、高市氏は、岸信介の孫である安倍さんのバックアップを受けていることから、日本民主党の流れをくんでいます。野田氏はどちらにも属していませんが、強いて言えば、小泉純一郎氏が総理大臣のとき、郵政民営化に反対して一度自民党から追い出されていますから、小泉氏や安倍氏(清和会)とは反対の立場だと考えられます。