全国の新型コロナウイルス新規感染者数が減少に転じ、街にもかつての賑わいが戻りつつある。感染の拡大を食い止めた最も大きな要因は、なんといってもワクチン接種といえるだろう。一方、今もまだウイルスやワクチンに関するデマが飛び交う状況は続いている。なぜフェイク情報を真に受ける人は生まれてしまうのだろうか。
ここでは、ジャーナリストの池上彰氏の著書『知らないと恥をかく世界の大問題13』(角川新書)より一部を抜粋。新型コロナウイルスを巡るデマ情報が流布した背景について紹介する。(全2回の2回目/前編を読む)
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大切なのは「教養の基礎体力」
毎日のようにテレビで新型コロナウイルスの話題を取り上げていたのに、ロシアによるウクライナ侵攻で、話題がすっかりそちらへシフトしてしまいました。
いまでこそコロナウイルスがどんなものかわかってきましたが、最初の段階では何もわからないので不安でした。不安だからこそコロナに関するデマが飛び交いました。ワクチンができると、ワクチンをめぐる陰謀論も拡散しました。
たとえば「ワクチンの中にマイクロチップが入っていて、世界の人々をコントロールしようとしている」という陰謀論。こういう話がまことしやかに出てくるのですね。でもどうやってマイクロチップをワクチンに入れることができるのか。そんな目に見えないようなマイクロチップが開発されれば、その時点で大きなニュースになるはずです。そう考えるとおかしな話です。そこで「そんなチップ自体、開発されていないぞ」と、常識的な判断ができるかどうか。