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巧妙なデマ

 非常に巧妙なデマもあります。こういうデマにひっかからないようにするにはどうしたらよいのかというと、それは「教養の基礎体力」だと思うのです。

 今回、mRNA(メッセンジャーRNA)を使って極めて早くワクチンをつくることができました。新しい技術のワクチンとなると、不安になる人も多いのはわかります。このmRNAワクチンについても、「ワクチンを打つと遺伝子が組み換わる」といったようなデマが広まりました。

 でも高校の生物の教科書を見ると、そもそも最初のところに「DNA」と「RNA」についての解説もありますし、mRNAは「伝令RNA」として、あくまで遺伝情報を伝えるメッセンジャーであるということが書いてあります。

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 高校生のときにきちんと学んでいれば、理解できたはずなのです。

ワクチンについて捏造論文を流したイギリスの医師

 ワクチンに関する警戒心を招いたのは、1998年にイギリスの医師が発表した捏造論文がきっかけだったといわれています。

 「三種混合ワクチン」という名前を聞いたことがあると思います。麻疹(M)、おたふく風邪(M)、風疹(R)の3種の病気を予防するワクチンです。頭文字からMMRワクチンと呼ばれます。

 これが「自閉症の原因である可能性がある」と指摘した論文を、イギリスの医師が定評のある学術雑誌『ランセット』に掲載したのです。

 医師は、三種混合ワクチンをやめて麻疹単独のワクチンに変更すれば安心と主張しました。実は、この医師が前年、新しく麻疹単独ワクチンの特許を申請していたのです。MMRワクチンを麻疹単独のワクチンに切り替えれば、自分が莫大な利益を得られるというわけです。自分のためにこんな論文を発表したということですね。 

©️iStock.com

 この論文が発表されて以来、世界中でワクチン接種が激減しました。麻疹患者が増え続けています。この論文が信じられてしまったのは、三種混合ワクチンの接種時期がちょうど生後12カ月から15カ月で、自閉症の症状が明らかになってくる時期と一致していたからです。

 ワクチンと自閉症、因果関係があると誤解されてしまったのです。