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《日本最北端ガンダムマンホール》「この町が好きだからこそ、この町が嫌いでした」おもちゃ屋がない町で生まれ育った公務員の“アニメからの疎外感”

北海道豊富町役場職員インタビュー#3

2022/11/13

genre : ライフ, 社会,

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公務員らしくない「公務員」

──今気づきましたが、奥にある山形さんの机も、大変なことになってますね。ガンダム、ドム、ポケふたのラバーキーホルダー、ステッカーにポストカード……立派なコレクターですね。

山形 恐縮です。

山形さんの「大変なことになっているデスク」 撮影/前島環夏

──先ほどの伺った豊富ガンダムオリジナルストーリーといい、お仕事とはいえ、公務員の方がここまでされるのは、なかなか珍しい印象です。

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山形 はい。私が自ら言うのも恐縮ですが、凝り性といいますか、かしこまっていないという意味では、あまり公務員らしくない公務員かもしれないです。

──山形さんはアニメやゲームがかなりお好きなようですが、なぜ町役場の職員になろうと思ったのでしょうか。もともと豊富町のご出身ですか? それともIターンなどで就職を?

山形 私は曾祖父の代から豊富町です。小中高と豊富町の公立に通い、高卒で役場に入りました。

山形さんの「大変なことになっているデスク」。マンホール愛が爆発している 撮影/前島環夏

──生粋の豊富人なんですね。

山形 生まれたときからずっとここなので、やっぱり町のために何かできればいいな、という気持ちがありました。でも一方で、ちょっと……町長の前では言いにくい話なんですけども。

豊富が好きだからこそ、豊富が嫌いだった

──なんでしょう?

山形 私は子どもの頃から『NARUTO』や『ドラゴンボール』、『魔法陣グルグル』など、アニメやゲームが大好きで。豊富町に愛着があり、好きである一方で、「豊富町にアニメの文化がないのはつまらない」と思っていました。その点においては、豊富町が嫌いだったのは事実なんです。

──好きと嫌いが混在していたんですね。

山形 ええ。都会の方には想像できないかもしれませんが、豊富町にはいわゆるおもちゃ屋がなく、ゲームの大会もありません。

 私が子どもの頃は、稚内にハローマックというおもちゃ屋があり、そこのゲーム大会に参加するのが楽しみでした。近隣の大都市は旭川ですが、200kmほど離れているので、子どもが簡単に行ける距離ではありません。

 テレビアニメを見ていると、よく「今度〇〇でイベント開催!」という告知が流れますよね。でも、そういう大きなイベントは旭川にも来ず札幌だけとか、北海道には来ず東名阪だけ……ということも多くて。

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