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「ガンプラを仕入れに行くぞ!」で“軽自動車1台分”の金額を投資…「自動車ディーラー兼プラモデル屋」が山形で花開いている話

2021/10/09

 山形県鶴岡市の「アローズ山形庄内中央店」は、クルマの販売や整備を手がける普通の自動車販売店だ。

 店が街にできたのは2010年のこと。鶴岡市は、日本百名山で知られる月山を東に、庄内砂丘と日本海を西に望む全国有数の穀倉地帯に位置しており、市の面積は東北地方で最も広い。雪も多いこの街では、自動車は文字通り生活に欠かせないものだ。それだけ自動車が重要なこの場所で、地元の人の生活を支えてきた。

 しかし、店内に一歩足を踏み入れるとクルマを売っている気配はどこにも感じられない。

 入口にはアパレル品やインテリアの輸入雑貨が並び、奥にはラジコンのサーキットが広がる。最も目を引くのはガンダムのプラモデル、いわゆる“ガンプラ”だ。販売だけではなく、塗装された完成品もズラリと棚に並ぶ。これは一体、どういうことなのだろうか――。

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店内のメインは「ほぼガンプラ」きっかけは…

「多いときには80箱ぐらい在庫を並べています。メーカー認定のプロショップなので、他では扱っていない限定品も販売しています」

 そう話すのは金野隆行社長。なぜ、自動車販売店でガンプラを売っているのか。

「自動車の販売だけだったら、お客さんは頻繁に足を運んでくれません。でも、ガンプラやラジコン、輸入雑貨があるおかげで、来店頻度が高まって、お客さんとの接点を増やすことができるんです」

一緒に販売する輸入雑貨。主にクルマ系の雑貨でワッペン、シール、ミニカーなどが並ぶ (写真提供:アローズ)

 自動車販売店と知らず、ガンプラを買いに来たお客さんが「この店はオイル交換もやってるの?」と整備をお願いすることも多いという。ガンプラの常連客の中には整備だけではなく、中古車を購入してくれた人も少なくない。

 ここでもうひとつの新たな疑問が出てきた。自動車好きを集めるのであれば、常識的に考えればカー用品やクルマのプラモデルを取り扱うのが筋である。しかし、店内でほぼメインになっているのはガンプラだ。

金野隆行社長 ©竹内謙礼

「きっかけは従業員を元気づけるためだったんです」

 話は2011年の東日本大震災にさかのぼる。