日本経済の中心地、東京・丸の内から“マル秘”財界情報をくわしくお伝えする『文藝春秋』の名物コラム「丸の内コンフィデンシャル」。最新号から、ダイジェストで紹介します。

★魚谷氏のコンサル人脈

 資生堂(藤原憲太郎社長CEO)の不振が深刻だ。2024年12月期は黒字予想から一転して4期ぶりの最終赤字に転落。ファンドに売却した「ベアミネラル」など化粧品ブランドの未決済分を引当金計上する。売上高も中国・米国の落ちこみで、為替影響などを除いた実質ベースではマイナス。2期連続で年間売上高が1兆円を割り込む。

 同社はここ10年、「魚谷王国」だった。日本コカ・コーラ会長を務めていた魚谷雅彦氏は13年に資生堂へ移り、翌年、社長に就任。23年に社長職を藤原氏に譲るが、会長CEOなどの肩書きで残った。25年1月に藤原氏がCEOに就いても、取締役兼シニアアドバイザーという肩書きを持っている。

資生堂の藤原憲太郎社長CEO(左)と魚谷雅彦取締役兼シニアアドバイザー ©時事通信社

 だが「魚谷氏の施策が現下の苦境を招いている」との評判がもっぱらだ。一つは中国事業への過度な傾注。「第二の本社」として育成してきた中国の地域売り上げは日本と肩を並べるまでになったが、現地の景況悪化や不買運動の動きなどを見誤った格好だ。

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「過剰出店や現地のローカルブランドとの無理な競争で、業績が低迷している」(同社関係者)

 もう一つの失策が日用品事業の売却だ。21年に「TSUBAKI」や「uno」などの有名ブランドを、投資ファンドに1600億円で売却。中・高価格帯のスキンケア事業などにシフトする狙いがあったが、高収益だった日用品の収益を穴埋めできていない。ベアミネラルなど化粧品3ブランドの売却も、赤字の元凶となっている。

「この経営不振を助長したのが、魚谷氏のコンサル人脈でしょう」(同前)

 魚谷氏は社長就任の年にマッキンゼー・アンド・カンパニー出身の青木淳氏を招聘。同氏は中国事業革新プロジェクト担当などを経て、執行役員常務にまでなった。社外取締役の大石佳能子氏や、21年まで社外取締役だった石倉洋子氏もマッキンゼー出身。外資系のお友だちで固めた体制が、戦略を見誤ったと見る向きは多い。《この記事の続きでは、資生堂の内情を関係者が解説しています》