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「経済的な自立」が目的ではない…父親がわが子を「自閉症アーティスト」として売り出す本当の理由

source : 提携メディア

genre : ライフ, 社会, ライフスタイル

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「おしえてー」

そんなときは、「これはどこどこの会社で、こんな商品を作りたいといってくれているんだよ」と説明する。すると満足した感じで「GAKUのー」という。

GAKUは、すべての物事に対してクロージングをしたがる。そして最後の着地点は、“Money!”となる。といっても本人の関心事は、そのお金で中古DVDと柿の種を買えるかどうかぐらいだが……。

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だから本人には、1万円以上のお金の価値はよくわかっていない(と思われる)。けれども、ビジネスマンとして自分の絵が換金されているかの確認はしてくる。新しい作品が溜まってくると、毎回こういう。

“GAKU painting,customer buy! When!(ガクの絵はいつ売れるのか)”

GAKUは、どの絵が売れたのかも覚えている。

少し前、GAKUの初期の作品があまっていたのでグループホームに飾ることにした。それからしばらく経って、GAKUがたまたまグループホームに行ったところ、自分の絵を見つけるなり、真剣に訴えてきた。

“GAKU painting,money! Gaku no rent!”

彼は、自分の絵をグループホームに売った覚えがない。そこで、自分の絵は売り物であってレント(貸す)はしないというのだ。それを聞いて、一堂で大笑いした。

「150万円」を絵に描くブーム

クラファンのときに、ミントキャットの絵をわが家用に購入したことは前述した。後日この絵がわが家に届き、ダイニングルームに飾られることになった。

GAKUは自分のクラファンページで、そのミントキャットに「150万円」という値段がついていることに気がついた。その時点で、彼に変なスイッチが入ってしまったようだ。

翌日彼はアトリエに着くと、かなり雑なタイガーを描いた。実は我々はミントキャットと呼んでいるが、彼の中ではそれはキャットではなくタイガーらしい。GAKUは「そのタイガーさえ描けば、150万円入るんだろ!」と大きな態度に打って出た。