高いIQを持つなど、特異な才能がある一方で、繊細さや強いこだわりも併せ持つとされている「ギフテッド」。IQが高いがゆえに、周囲と馴染めず、精神的に苦しむ人もいるという。いったい、彼ら彼女らは、どんな困難を抱えて生きているのだろうか。

 ここでは、学校生活で苦しむ人、家族と衝突する人などの多様な当事者や、ギフテッドを受け入れている学校、支援団体の実情に迫った、阿部朋美・伊藤和行著『ギフテッドの光と影 知能が高すぎて生きづらい人たち』(朝日新聞出版)より一部抜粋。

 国内では珍しいギフテッド教育に取り組むNPO「翔和学園」(東京都中野区)の教職員、石川大貴さんに、どんな子どもたちが、どんな教育や支援を受けているのかを取材した内容を紹介する。(全2回の1回目/2回目に続く

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東京都中野区にある翔和学園の「ギフテッド・2E対応クラス」(写真提供=朝日新聞社)

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「あれは挫折でした」

「集団授業を受けるか、自分が興味のあるプロジェクトに取り組むか、基本的に自分たちで決めて取り組んでもらっています」と石川さん。そして、気になることを言った。

「実は、今はギフテッドの子だけを集めたクラスは設けていません」

 どういうことだろうか。たしかに、高IQの生徒や、突出した才能がある子だけがいるわけではなさそうだ。コミュニケーションが難しそうな生徒もたくさんいる。

「以前は、『アカデミックギフテッドクラス』を設け、IQの高さを基準に才能のある子どもだけに特化した教育もしていましたが、やめたんです。今は子どもたちを区分けすることはしていません」

 たしかに、学園のパンフレットの「ギフテッド・2E対応クラス」の説明には、「才能識別によらないすべての困り感を抱えた特異な子どもたちへの特別支援教育」とある。ギフテッドや、障害も併せ持つ2Eの子どもたちを選抜して特別な教育を行っていると思っていたが、特別支援教育ということは障害者への支援に切り替えたのだろうか。

「才能識別によらない」のであれば、果たして子どもたちはどういう基準で入園し、どんな授業を受けているのだろうか。疑問が湧いた。

「あれは私たちの挫折でした」。補足して説明してくれたのは、学園長の伊藤寛晃さんだ。「挫折とまで言ってしまうのはなぜ?」と尋ねると、こう言った。