福岡県に住む北條みすづさん(32)は、目のがんのため生後すぐに左目を摘出、右目の視力も「調子がいい日で0.02」と弱視で、最も重い1級の障害者手帳を持っている。

 20歳で結婚、29歳で新たながんが発覚、そして現在は「視覚障害者向けのメイク」の普及活動を行っている。自分では見づらくてもメイクをすることの大切さや、意外な効果について話を聞いた。(全4本の4本目/最初から読む

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視覚障害者向けメイクの講習で、顔の部位を説明する北條さん(本人提供)

29歳で子宮体がんが発覚、摘出を勧められたが温存を決意

──29歳のとき、新たながんが。

北條 子宮体がんです。1年弱治療しましたが、翌年再発したので再治療して、今は経過観察中です。

──小さい頃の小児がんとは関係あるのですか。

北條 新たに発生したがんのようです。私はもともと遺伝子レベルでがんになりやすいと言われていたので、自分の中で一番弱かった子宮に現れたのかなと思っています。

──どのような治療を?

北條 最初にわかったときはステージ1だったので、ホルモン剤の服用と子宮内膜の掻把(そうは)をしました。主治医からは再発リスク回避のため子宮摘出を勧められましたが、当時は子どもがほしい気持ちがあったので温存したんです。

 再発時もステージ1未満だったので、このときはホルモン剤の服用だけ。結婚から12年の今は「子どもを授かったら幸せだな」と思いますが、妊活はしていません。

──パートナーとの出会いについて教えてもらえますか。

北條 夫は、盲学校卒業後に通った障害者職業能力開発校の同級生です。とはいっても、年齢は21歳違うんですけど。

東京・浅草にて、パートナーと北條さん(本人提供)

──年の差婚なのですね。

北條 出会ったときは私が19歳、彼は40歳でした。当時の私は眼精疲労がきつくてメガネをやめていて、新しく出会った人のことは声と話題だけで認識していたんです。だから「年上だな」とは思いましたが、お付き合いするときに実年齢を聞いて驚きました(笑)。

 実は能力開発校に通う直前に東日本大震災が起きて、私の就職は難航していたんです。でも彼は就職が決まり、そのタイミングでプロポーズされて、20歳で結婚することになりました。