──日常的に困ることはありますか。
北條 私は料理が好きなんですが、調味料のパッケージは似たものが多くて、どの瓶が何かわかりにくいですね。買い物はヘルパーさんと一緒にするので大丈夫ですが、家で使うときにわからなくなってしまって。そこで、ボトルにゴムをかけてその位置や本数を変えてみたり、百均のデコシールを貼って「シール1枚は塩、2枚なら砂糖」と触って判断しています。
──工夫がすごいです。
北條 あと、夜道はやっぱり怖いですね。外に出るときは歩道の点字ブロックを歩けばいいと思われがちですが、実際はブロックのない道も多くて。そんなときは歩道の左右どちらかに寄って、白杖で車道側の縁石や側溝の縁を確認しながら歩いています。街路樹などがあればそれに触りながら歩くことも。
それでも車や自転車が急に来ることがあるので、 明るい色の服を着るなどして、できるだけ見つけてもらいやすくしています。
視覚障害者向けメイクの普及活動を始めたのは、入院がきっかけ
──現在は、視覚障害者向けメイクの普及活動もしているそうですね。
北條 「ブラインジェンヌ」というチーム名で、目が見えない人、見えづらい人も化粧を楽しんでもらえるように、スキンケアやメイクを広める活動をしています。
──何がきっかけだったのですか。
北條 体調不良が続いて、29歳のときに全身を検査するため2週間入院したんです。ちょうどコロナ禍で面会が一切できず、入院中はメイクも禁止でした。
それまでほぼ毎日メイクしていたのに、面会NGにメイクNGが重なって、気持ちがズーンと落ちてしまったんですよ。それで、私にとってメイクはとても大切なんだなと。
──わかる気がします。
北條 でも、その直前に全国の視覚障害者女性を集めた「女子力向上委員会」というLINEグループを立ち上げていたんです。入院中もそこでメイクやオシャレの情報交換ができたことが、自分の心の支えになりました。
あと、メイクレッスンの先生から「肌に触れて自分と向き合う時間が大切」と言われたのを思い出し、病室でスキンケアをしたらモヤモヤした気持ちが晴れてきて。見える、見えないに関係なく、スキンケアをすると肌も心も整うと実感しました。この喜びを、他の視覚障害者の方々にも伝えたいと思ったんです。