「鏡で自分の顔が見えないからムリ」と諦めている人も多いけど

──視覚障害がある人たちは、普段のスキンケアやメイクはどうしているのですか。

北條 「鏡が見えない、自分の顔が見えないからムリ」と諦めている方も少なくないのが現状です。

 でも、鏡を見なくてもできることはあるんです。目が見えても、鏡がない場所でメイクを直すことはありますよね。だから「視覚障害があってもできることは結構あります」とお伝えしています。

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──たとえばどんなことでしょう。

北條 スキンケアだと、化粧水やクリームのあとのマッサージですね。視覚障害者は鍼灸やツボの知識がある方が多いので、顔のマッサージはとても相性がいいんです。メイクも「こういう道具を使えば塗りやすい」など、私自身の経験からつかんだポイントがあります。

──どんな道具が便利なのですか?

北條 たとえば、私が愛用しているセリアのヒンジクリームケース。リキッドファンデなど、液体系の化粧品を使うときに欠かせないんです。

 見える方はよく手の甲に出して塗りますが、視覚障害者には「手の甲のどこに出したのかわからなくなる」問題があるんです。これをクリームケースに出せば確実に指にとれるし、出しすぎても戻してフタを閉めれば数日はもちます。

北條さんが愛用しているセリアのヒンジクリームケース(YouTube『ブラインジェンヌチーム』チャンネルより)

──便利そうですね。

北條 あと、視覚障害があると「マスカラはブラシが目に入りそうで怖い」という方が多いです。そこで私は「利き手と逆の手指を下まぶたに添えて、目をガードすれば大丈夫」と話しています。私たちにとっては触覚が一番の情報源なので、手使いを工夫すればメイクをもっと楽しめます。

──手が一番の情報源。

北條 ときにはツボの名前で説明することもあります。

 たとえば口紅を塗るとき、見える方は「口角(唇の両脇)」という言葉をよく使いますが、視覚障害があると「口角ってどこ?」という方がわりと多くて。でも鍼灸の知識がある方には「地倉(ちそう)」というツボの名前を言うと通じることがあるんです。

 いろいろなやりとりをするうち、ただ「目元」「口元」と言うよりも、ツボの名前や顔のパーツの具体的な位置で説明すると伝わりやすいと気づきました。