高いIQを持つなど、特異な才能がある一方で、繊細さや強いこだわりも併せ持つとされている「ギフテッド」。IQが高いがゆえに、周囲と馴染めず、精神的に苦しむ人もいるという。いったい、彼ら彼女らは、どんな困難を抱えて生きているのだろうか。

 ここでは、学校生活で苦しむ人、家族と衝突する人などの多様な当事者や、ギフテッドを受け入れている学校、支援団体の実情に迫った、阿部朋美・伊藤和行著『ギフテッドの光と影 知能が高すぎて生きづらい人たち』(朝日新聞出版)より一部抜粋。

 国内では珍しいギフテッド教育に取り組むNPO「翔和学園」(東京都中野区)には、どんな子どもたちが通っているのだろうか。(全2回の2回目/1回目から続く

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写真はイメージです ©iStock.com

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「ここはいい具合に騒がしくて、自由なことをさせてくれるから好き」

 一般の学校には行けず、特別支援学校にも行けない子どもたちの受け皿となっている翔和学園。才能がある子を選抜して特別な教育を与えるエリート教育を廃止し、才能も1つの特性だと捉え、ギフテッドも含めて障害のあるなしに関係なく同じ場所で学ぶインクルーシブ教育に転換した。

 実際に子どもたちはどう思っているのだろうか。

 中学3年の女子生徒は、教室の角のスペースで、釘や金物を使わず組み立てる伝統技法の木組みに挑戦していた。学園のプロジェクトの1つで、千葉県の耕作放棄地に城を建てるための作業をしているという。1年前に建築士に木組みの方法を学び、あとは職員と見よう見まねで取り組んでいると言った。

 入園は21年11月。高い知能があるが、在籍する中学校のクラスメートとはうまくいかず、不登校になったという。

「ここはいい具合に騒がしくて、自由なことをさせてくれるから好き」

 軍手をして汗水流す女子生徒は生き生きとした表情でそう言った。

プログラミングに熱中するIQ150の生徒

「さきほど紹介したIQ150の生徒が彼です」

 石川さんが案内してくれたのは中学3年の男子生徒。教室の窓際のイスに座り、パソコンのキーを黙々と打っていた。ぼさぼさの髪は肩まで伸び、細身で顔色はあまり良くない。背後はパーテーションで仕切っていた。

 石川さんによると、小学生時に入園した当初の無気力な態度はなくなり、今はアニメのウェブページを作るためのプログラミングに熱中しているという。時折、クラスメートに話しかけられたり肩をたたかれたりしているので、友達もいるようだ。

「学校はどうして行かなくなったの?」。私が聞くと、「いろいろやらされることが嫌で、面倒になった」。

「最初は翔和学園でもずっとやる気がなかった?」「ええ。反抗期だったんでしょ」

 返答は一言ずつ。素っ気ないが、コミュニケーションを嫌がっている感じはしない。石川さんは「大変でしたが、ゆっくり時間をかけて見守ることで、今のようにやりたいことに取り組んでくれるようになりました」と教えてくれた。