小学3、4年までは良くても……
石川さんが思い出すのは、IQが150以上あった小学生だ。小学校を不登校になり翔和学園へ来たが、床にずっと寝転がっているだけの日々が続いたという。石川さんが「これやろう」と誘っても、「やだ」「こっちくるな」と一蹴するだけで、教職員の言うことも一切聞かなかった。
「IQが高くても、読み書きといった基礎学力がきちんとできない子もいる。小学3、4年まではそれでも成績はいいのですが、高学年になると、努力して勉強している子にどんどん追い抜かれてしまいます。努力したり協力して解決するといった力が身についていないままになってしまっていたのです」
アカデミックギフテッドクラスは3年で終了した。18年4月からは、IQや障害の内容にかかわらず、受け入れるすべての児童生徒・学生を「ギフテッド・2E対応クラス」として支援することを目指している。
「もちろん、子どもがやりたいことをやる個別授業もあります。気づかれなかった才能が見いだされることもあります。ただ、いくらIQが高くても、生活スキルや集団の中でのコミュニケーション力をある程度身につけないと、社会で力は発揮できません。高IQも障害も1つの特異性だと私たちは考えており、社会でどう生きていくかをきちんと支援しなければという考えでやっています」(石川さん)
受け入れる側の態勢はぎりぎり
翔和学園には、23年1月時点で児童・生徒・学生は、小学部6人、中学部4人、高校部10人、大学部が約70人の計約90人が在籍している。特に3年ほど前から、不登校になったり学校でトラブルがあったりした子どもの保護者から、入園の問い合わせが増えているという。
だが、受け入れられず断ることも多いという。「今はなかなか受け入れを増やすのは難しい」と石川さん。学園の教職員は現在9人ほどで、10人を教職員1人で担当する状況だという。石川さんは、「IQ30~150までの子どもが、同じ場所で教育を受けています。受け入れる側の態勢はぎりぎりです」と実情を話してくれた。