効率を愛する時代のなかで、アナログな過去に共鳴する者たちがいる。タイパもコスパもかなぐり捨てて、車との対話にこだわるオーナーたちの素顔とは?

 今回は「Nostalgic 2days 2025」の出展者から、1972年式の三菱・ミニカに乗る「らん」さんをご紹介。

夫は別ジャンルの車好きで、現在はトムスバージョンのアリストに乗っているのだとか

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祖父から託されたミニカ、いずれは娘にも…

 もともとこのミニカは、40年ほど前に私の祖父が中古で購入したものなんです。それから20年ぐらい車庫で眠ったままだったのですが、定年退職を機に少しずつ弄りはじめ、時間をかけてレストアしていったんですね。

現オーナーの祖父が購入して20年ほど車庫で眠らせていたが、定年退職を機にレストアを開始

 ミニカが路上復帰してからは、私も送迎なんかで乗せてもらうことがあり、以前から愛着のある車だったんですよ。もちろんその当時は、自分の車として維持するなんて考えもしませんでしたが……。

 でも実際に、免許を取ってはじめてミニカを運転してみると、もう一瞬で惚れ込んでしまったんです。細いハンドルやシートの感触が、教習車と全然違って。

今では珍しくなくなったハッチバックボディだが、軽では三菱が最初期に採用している

 動かしてみても、ハンドルは重いし大変なんですけど、「自分で動かしている」という感覚がとても新鮮だったんです。

 それで、祖父が「ミニカをこの先どうしようか」と悩んでいたこともあり、私から「どうしても乗りたい」とおねだりして。祖父はとても喜んでくれて、20歳の誕生日にこのミニカと、ずっと弄っていたメッキモンキーというバイクを譲ってくれたんです。

 

 今は乗りはじめて3年目になりますが、やはり古い車ですので、乗る機会は限られますね。クーラーがないので夏は乗れないですし、雨の日はどこから水が漏れるかわからないですし……。雪の降る地域なので、冬場は大切にリフトアップして保管しているんです。

 ただその分やっぱり、乗っていると今の車にはない楽しさがありますね。アナログな操作感もそうですけど、乗り心地も意外と悪くなくて。足まわりには板バネではなく、普通のスプリングが使われているので、フワフワしていて快適なんですよ。

ボディ側面にはところどころにキズやヘコミが。2004年の中越地震の際に残されたヘコミもあるという

 たまに友だちを乗せることもありますが、デザインや雰囲気を気に入ってくれる人は多いです。一度「シートベルトなくていいね」なんて言われたことも……。色々なところが今の車と違いますし、人によって目をつけるポイントが違うのも面白いですよね。

 今は結婚していて、1歳の娘もいるので、普段の足にはソリオを使っています。やっぱり小さい子がいると、今の安全な車の方がいいですしね。

MT免許を取得してミニカを運転した瞬間、その魅力に引き込まれてしまった

 ただ娘が大きくなって免許を取ったら、この車に乗ってくれたらいいなって。私も祖父もひそかに期待しているんですよ。親子4世代にわたって維持できるよう、もうあと20年、頑張って乗っていけたらいいなと思います。

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。