「宗教2世」だったからこその良い面もある
関口さんがエホバの証人から距離を置いてから44年がたった。しかしまだ、完全に宗教を克服できたとは言い切れない。
今でも幼少期に植え付けられた恐怖が襲ってくることもある。昼寝中、カーテンが揺れるだけでうなされるのは「母親への畏怖の念」が残っているからだという。
今、関口さんは「宗教2世」だからこその良い面に向き合うことを始めている。
「今でも夢にうなされることもありますけど、あまり、ネガティブに捉えないようにはしています。実際、ポジティブな側面もあったんです。エホバでは、『ものみの塔』『目覚めよ!』という雑誌と冊子がありまして、それを1冊120円だか150円で売るんですよ。子供でもそれをやらされる。ネクタイ締めて、ピンポンするんです。『聖書の研究をしている者なんですけども、こういう良いニュースがありまして、あなたもぜひ読んでみませんか』みたいな決まり文句があるんです。これって相当な度胸が、勇気が必要なんですよ。かなり鍛えられました。人とのやりとりとか、人と話すこととか、メンタルが。『うちは仏教だ!』と怒鳴られたりとか。一番多いパターンは、キョトンとされるんですよ。なんなのこの子は、何を言っているのかわからない、みたいな。たぶんMCにも生かされていますね(笑)」
関口誠人が「宗教2世」を告白したワケ
関口さんは「宗教2世で苦しんでいる人たちの力になりたい」と話す。
「僕はぶっちゃけ母が大好きだった。亡くなった時は本当に変になりそうだった。そんな僕がいま一番考えているのは、2世だった自分の過去をいかに払拭するかということよりも、いま現在、2世で苦しんでいる人とか、やめたいんだけどやめられないとか、どうしたらいいかわからない人とか、やめた後、排斥された人で家族にろくに口をきいてもらえないという状態で孤立している状況の人たち全員に、SNSで、思いを共有できるような言葉を一言でも残せたらと思っています。それが今、自分ができる数少ないひとつなのかなと思っています。それを話せばきっと、もういなくなっちゃった渡辺くんも笠くんも賛成してくれると思うんですよね」
フリーライター
1978年、大阪生まれ。写真週刊誌『FLASH』記者、『マンスリーよしもとプラス』編集を経て、海外放浪の旅へ。帰国後『ニコニコニュース』編集記者として活動し、のちにフリーランスとなる。。著書に『もし文豪たちがカップ焼きそばの作り方を書いたら』(菊池良との共著、宝島社)、『おーい、丼』(ちくま文庫編集部編、ちくま文庫)、『台湾対抗文化紀行』(晶文社)。マンガ原作に『めぞん文豪』(菊池良との共著、河尻みつる作画、少年画報社。『ヤングキング』連載中)