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刺繍なしは優しさの表れ? 広島のルーキーたちのグラブから読み取る“人となり”

文春野球コラム ウィンターリーグ2019

2020/02/01
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グラブに言葉を入れなかった裏側

 育成2位・木下元秀(敦賀気比高)のグラブも、ローマ字で名前を入れただけだ。

「“ありがとう”と入れようと思っていました。でも、他の人も刺繍するものなのか不安だったので、攻めないようにしました。そうしたら、皆さん割と入れていましたね」

 言葉を入れなかったグラブは、空気を読もうとした繊細さを表す。これまでも大切にしてきたという感謝の言葉。「“ありがとう”と言われて、嫌な気持ちになる人っていないですよね」とさらりと口にするところがカッコイイ。育成1位・持丸が「確かに“ありがとう”とよく言っています」と証言するのだから、男前な性格なのだろう。

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 新入団選手発表会見で「すごくしゃべるのが好きで明るい感じです。関西(大阪)出身なので話すのも負けられない。僕はスベるタイプです……」と関西弁のイントネーション全開で話し続けた18歳。高校時代は投手用グラブに「ありがとう」と刺繍していた。「次のグラブには“ありがとう”と入れます」とした苦笑いには、新グラブへの遠慮に少しばかり後悔があるように見えた。ドラフト4位・韮沢雄也(花咲徳栄高)、同6位・玉村昇悟(丹生高)は優しそうな笑みを浮かべながら、刺繍がないことを「すみません……」となぜか頭を下げてくれた。

 グラブに言葉を入れなかった裏側を知れば、心和む温かさが残る。また、同5位・石原貴規(天理大)が「何も入れていなくてごめんなさい。面白くないですよね……。次は何か入れます!」と言った笑顔には、グラブを見なくとも伝わる温厚な人柄があったことを最後に付け加えておきたい。

河合洋介(スポーツニッポン)

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