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「私きれいかも!」と現場に行ったら「全然ブス」…それでも美の国・フランスで“ドラァグクイーン”として生きる日本人の覚悟

「私きれいかも!」と現場に行ったら「全然ブス」…それでも美の国・フランスで“ドラァグクイーン”として生きる日本人の覚悟

マダムワサビインタビュー #2

2024/04/07

genre : ライフ, 社会

note

ワサビ “より美しく、より面白く”ですね。

 私のまわりのドラァグクイーンたちは美しさのレベルが高くて、彼女たちの隣にいるといつまでたっても満足感が得られませんでした。自分の家で化粧して「私きれいかも! マニフィック!(フランス語で「素晴らしい」という意味)」と現場に行ったら「全然ブスだわ」って思うことなんてしょっちゅう(笑)。

 でも昨年、フランスで活躍するドラァグクイーンの写真集に参加して欲しいとオファーをいただいたのです! パリのドラァグクイーンたちは、ビューティーのレベルが高いんですが、そんな彼女たちと肩を並べている自分の写真を見たときに、やっと追いつけたんじゃないかって思えました。 

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左から2人目が、ドラァグクイーンとして舞台に立つワサビさん(写真:本人提供)

 こういったコンセプトのものに選んでもらえて、最近はようやく自信が出てきましたね。ドラァグクイーンが美を競い合うアメリカの番組『ル・ポールのドラァグ・レース』がフランスでも制作されるようになったので、いつか出演したいです。

 それに、ドラァグマザーのアリスからは、やっと自分のことをプロのドラァグクイーンだと認めてもらえた気がしているんです。

ドラァグクイーンの「複雑な師弟関係」

――初日に化粧をしてくれなかったアリスさんですね。でも、そういうことですか?

ワサビ アリスはとても綺麗でレベルの高いドラァグクイーン。そんな彼女のステージに呼んでもらえて、一緒に働けるレベルになったということです。ドラァグクイーンとしてのレベルが低いと、マザーからドーターだと認めてもらえないんです。

 反対に、ドラァグドーターの方が人気が出てしまうと、母と娘の仲がこじれてしまうこともあるんですけどね。

――なかなか厳しい師弟関係のある世界なんですね。

ワサビさんの異国の地での活動はまだまだ続く (写真:本人提供)

ワサビ もう一つ、“面白く”というのは、パリの本当の姿を日本の皆さんにおもしろおかしくお伝えできたらと思っています。日本のメディアが伝えるのはフランスのいいところばかり。実際はホームレスの方や貧しい移民の物乞いの親子がいたり、スリもいます。でも彼らをそうさせてしまうのは、フランス社会の仕組みのせいだったりもします。

 そんなことを真面目に話してもなかなか聞いてもらえないと思いますが、マダムワサビのキャラクターで、くだらない話の中にそういう話題を織り交ぜるとみんな聞いてくれるんですよね。そのために、もっと知名度を上げて発信力をつけていきたいです。

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