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「さっさといなくなれ」母は突然、沸かしたお湯を肩からかけてきた…当時小学生だった被害者が語る、“壮絶な虐待”の記憶

「トラウマは連鎖する」第2回 丘咲つぐみさんインタビュー#1

2024/04/29

genre : ニュース, 社会

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 心身症とは、ストレスによって発症する病気の総称で、呼吸器系の喘息、循環器系の不整脈、消化器系の胃潰瘍、神経系の片頭痛や自律神経失調症など、幅広い症状が確認されている。

 言うまでもなく、丘咲さんにとってのストレス源は家庭にあった。入院することで家から離れることができた丘咲さんは、2週間ほどで回復。入院中、母親は毎日のように面会に来ており、病院での母親の評判は悪くなかった。

 ところが、元気になった丘咲さんが退院して帰宅すると、母親は家の玄関扉を閉めた途端、これまでにないほど荒れ狂った。

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「当時、心身症は小児の発症率が低いということもあり、病院の医師が母に、家庭内に問題がないかどうか確認したそうです。そこで母はプライドが傷ついたのでしょうね。退院して家に入った途端、台所にあったフライパンで私を絶え間なく殴りながら、『お前のせいで恥をかいた!』『お前は不幸を呼んでくる!』とヒステリックに叫んでいました」

 外面の良い母親は、丘咲さんの姉が小学校3年生の時からPTA役員を連続して務めており、教師たちとのコミュニケーションを怠らなかった。

「母はものすごく外面を気にする人で、周りから良く見られたい気持ちが強かったのか、人がやらない役回りも率先して受けていました。なのできっと先生方は、私の母が暴力を振るう人だなんて思わなかったでしょうね……」

 退院したばかりの丘咲さんは、母親からの暴行を受けながらも、「お母さんをガッカリさせてしまった」「私なんか生まれてこなければ良かった」という悲しさに苛まれた。

「親から虐待を受けたことのない人には理解し難いかもしれませんが、どれだけ暴力を受けていても、子どもからしたら一番そばにいてくれる大人は母親なので、その存在から『失望されたくない』『褒められたい』という気持ちが拭いきれませんでした」

Ohara利用者の誕生日会を祝う、現在の丘咲さん 本人提供 

「お前はすごく醜い」容姿を貶めてくる父親

 母親が丘咲さんに暴力や暴言をふるうときは、決まって父親や姉がいないときだった。営業マンの父親は、土日も仕事で帰りも遅く、滅多に家にいない。3歳年上の姉は、部活や友だちとの付き合いで家にいないか、自室にいるかのどちらかだった。

 家にいる日の父親は、夕飯時になるとビールを飲みながら野球中継を見ていることが多かったが、丘咲さんが中学生になったある晩からそれは始まった。

 突然テレビの前に立つように言い、その通りにすると、おもむろに父親は「お前はすごく醜い」「獣みたいに太っているけど、本当に人間か?」などと言いながら丘咲さんをジロジロと舐めまわすように見てきたのだ。

「姉は、父に似て目鼻立ちがくっきりしていたせいか何も言われなかったのですが、私に対してはやたらと容姿を蔑んできて、ニヤニヤしながら凝視されるのが嫌でたまりませんでした」

 母親もその場にいたが、父親を止めようとはしなかった。以降、父親が家にいる日は、こんなことが度々行われた。

 さらに丘咲さんは、高校生になった途端にひどいいじめに遭い、不登校に。そしてその夏頃から拒食症を発症した。同じ年の冬頃からは背中や左半身全体の耐え難い痛みに悩まされ始める。

「高校入学までの私は母の期待に応え、それなりに結果を出していたと思います。それが思うように出せなくなっていきました……」

「さっさといなくなれ」母は突然、沸かしたお湯を肩からかけてきた…当時小学生だった被害者が語る、“壮絶な虐待”の記憶

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