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見えてくる「新聞配達」の独特さ

 読売は値上げの詳しい説明を2面に掲載。そこには「戸別配達網を維持」という大きな見出しが。

 抜粋してみる。

《社会情勢が大きく変化し、新聞業界を取り巻く経営環境の悪化は、読売新聞社も例外ではありません。全国の読売新聞販売店では、深刻化する人手不足の影響で、従業員の労務難がこの1、2年で加速しています。従業員数は1年前に比べて5%弱(東京本社管内)も減少しました。》

「人手不足」という社会情勢がリアルにわかる。

「その日」の読売新聞

 さらに次。

《本社と販売店は、労務環境の改善などに取り組んでまいりました。輸送コースを徹底的に見直すなどしております。

 しかし、ガソリン価格が上昇するなど配達コストが増大しています。》

 強調されるのは「人件費や輸送費上昇」だ。その理由には新聞独特の宅配制度がみえてくる。戸別配達網を維持するためにはコストがかかるのだ。

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日刊ゲンダイの短期連載を思い出した

 ここでハッとした。そういえば……と思い出した記事があったのだ。

 日刊ゲンダイが今月から始めた短期連載である。外国人労働者受け入れ拡大のための入管法改正案が成立したが、そのずさんさゆえ、これまでの「技能実習制度」も注目された。

 しかしゲンダイはジャーナリスト出井康博氏による「留学生」に注目した短期連載だったのだ。実習生にも増して留学生がひどい待遇を強いられている、という告発。

©︎iStock.com

 なかでもインパクトがあったのが12月11日付の「“奴隷労働”が支える全国紙の配達網」という回。現在の新聞の宅配制度は留学生なしではありえない現実が書かれていた。

《新聞配達は今、留学生なしでは回らない職種のひとつだ。特に都市部の新聞販売所では人手が足りず、留学生頼みが著しい。東京都内には配達員全員がベトナム人留学生という販売所まである。》(12月11日付)

 かつては「新聞奨学生」が大きな戦力だったが、時間的にも体力的にも厳しく最近では日本人の若者は敬遠。「そのため、留学生に頼る状況となる」という。

《新聞業界で最も早く「留学生」に着目したのは「朝日新聞」だ。1980年代初めに「朝日奨学会」を通じ、中国から新聞奨学生の受け入れを始めた。ただし、当時は中国との友好事業の一環で、人手不足とは無関係だった。そして近年、販売所の人手不足が進むと、ベトナム人奨学生が急増していく。昨年は300人近くが来日し、首都圏の販売所に配属された。》(同)