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とくに問題なのは「過剰診断」による治療

 乳がん検診についても、死亡率を下げる効果はあったとしてもとても小さく、EBM(科学的根拠に基づく医療)の実践家として知られる名郷直樹医師(武蔵国分寺公園クリニック院長)も次のように指摘しています。

「デメリットを考えると、乳がん検診はコストがかかる割に効果が小さい。集団検診として公費をつぎこむのはやめて、乳がんリスクが高い人だけ受けられるようにするほうがいいかもしれません」(「専門医が勧める受けるべき検査」週刊文春2018年11月29日号)。

 この中で一番メリットのあるのは大腸がん検診ですが、それですら皆さんが思うほど大きな効果ではありません。また子宮頸がん検診は信頼性の高いデータはないものの、「コストが安いので、集団検診に適している」(名郷医師)という評価です(前出の記事および、名郷直樹著『検診や治療に疑問を感じている方! 医療の現実、教えますから広めてください!!』ライフサイエンス出版など参照)。

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 がん検診にはメリットばかりでなく、がんを見落としてしまう「偽陰性」や、逆にがんでないものを異常ありと診断してしまう「偽陽性」、命を奪わない病変をがんと診断して治療してしまう「過剰診断(過剰診療)」などのデメリットがあります。

 とくに問題なのが過剰診断で、治療する必要のない病変なのに、手術を受けたり抗がん剤治療を受けたりすることもあります。つまり、「早期発見、早期治療」は、しゅんPさんが力説するほど、いいことばかりではないのです。がん検診は効果が限られていることや、デメリットもあることを理解したうえで、自分の判断で受けるか受けないか決めるべきものだと言えるでしょう。

「長生きできる」証拠はなかった

 がん検診以外の定期健診についても、欧米でたくさんの臨床試験が行われましたが、いずれも「長生きできる」という証拠を得られませんでした。デンマークの研究者らが14件の臨床研究を統合し、18万人分のデータを解析した2012年の論文でも、定期健診を受けても心臓病、がんの死亡率は下がらず、寿命を延ばす効果も確認できないと結論づけられています(BMJ, 2012. 345:e7191.)。

 そればかりか、この研究では定期健診を受けると「病気」と診断される人が増え、コレステロールや血圧を下げる薬の服用が増えることも指摘しています。つまり、定期健診を受けても寿命は延びないのに、ムダな治療を受ける人が増えて、ムダな医療費が嵩んでいく可能性が高いのです。