2018年下半期(7月~12月)、文春オンラインで反響の大きかった記事ベスト5を発表します。エンタメ部門の第5位は、こちら!(初公開日 2018年12月17日)。
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いや悔しいです。何が悔しいって、あのM-1の騒動です。まーもー説明する必要もないでしょうが、前年覇者であるとろサーモン久保田と、今年本戦7位だったスーパーマラドーナ武智がM-1終了後に居酒屋で突如はじめたインスタライブ。上沼恵美子(とは言ってないけど明らかに)の審査に対する批判を「オバハン」「更年期障害」と女性蔑視、年齢差別とも取れる言葉で繰り広げ、そこからの展開は言わずもがなです。はらたいら先生が聞いたら泣きますよ。あんなに必死に「男性にも更年期があり、なんなら男性の方が長引く可能性もある」と自らの体験を踏まえて訴えてきたのに、あんたらぜんぜん他人事じゃないよ。あと一般的に女性は閉経前後の数年が更年期のピークと言われており、女63歳なんてマジで無敵以外の何者でもない。『婦人公論』を読めばわかります。
……という話がしたいわけではもちろんなく、インスタライブでの発言云々より、その後の芸人界および報道の質感にめちゃめちゃ違和感があるのですよ。「関西の女帝を怒らせた!!」「干されるぞ! 最悪引退か!」とマスコミは色めき立ち、先輩芸人たちは一斉に件の騒動に対してコメント発射。同じ審査員席に座ったオール巨人は「僕として、触れない訳にはいかないので、…ですが、ここでどうのこうの、書けないし 書きませんが、しっかりした大人に成れって伝えました!」とブログで発信、M-1司会者である今田耕司はイベントの席で「今から久保田の悪口を、上沼さんの分も言おうと。本当にあの男だけは……」と主催者の制止を振り切りながら訴え、博多大吉は「僕史上、最大級の雷を落としますよ」、南キャン山里は「久保田、武智、SNS講習で習ったろ? 『飲んだらやるな。やるなら飲むな』って」……etc。それぞれの芸人が「お怒り」という形で今回の騒動を諌めようと躍起になっていました。
誰も問題の根本には触れてない
なんでしょう、この荒れ狂う海に対して為す術もない人間たちがひたすら祈り踊り供物を捧げるみたいな絵面は。そもそも上沼恵美子自身が怒ってるのかもよくわからないのに。そしてよくよく読めば「この俺が怒っておくんで勘弁してください」とか「酔ってSNSするなとあれほど」とか、久保田・武智サイドの発言ばかりで、誰も問題の根本には一切触れてないんですよね。「更年期障害」の「オバハン」が「自分の好き嫌いだけで審査している」ということに対する、反論も是非も是正も、誰も言ってはいないのです。まるで「女帝を怒らせた」ということこそが、