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●「世界一の隣の最小」南新宿駅(小田急小田原線)

 新宿駅を出発した小田急線の列車がトンネルをそろりと抜けて右カーブ、踏切を渡ったあたりにあるのが南新宿駅である。所要時間はわずか1分。高層ビルに囲まれた日本一(いや、世界一か)のターミナル新宿駅とはうって変わって閑静な住宅街の中にある小さな駅だ。

新宿の高層ビル街もすぐそば
ローカル感を感じさせる佇まい
新宿駅からは電車で“1分”

小田原市の足柄駅とワースト1、2を争う

 この大ターミナルの隣の南新宿駅は、2017年度の1日あたり乗降人員わずか4024人。小田原市の足柄駅に次ぐ小田急全駅ワースト2位である。さらに2016年度まで遡れば、足柄駅よりも利用者は少ないワースト1。小田急線といえば小田原方面の山の中にいくらでもローカル感たっぷりの駅がある。にもかかわらず、ワースト1、2を争う過疎駅は世界一の駅の隣にひっそり佇んでいるのだ。

近くの商店街は南新宿駅前というよりは代々木駅前のあつかいに

 もちろん、さすがに場所は新宿。周辺は閑静とは言いつつも住宅街が広がっており、少し歩けば多くの人が行き交う商店街もある。いったいに、どうしてワーストなのか。その答えは実にシンプルである。なにしろ、新宿駅から近すぎる。さらにもっと近いのが代々木駅で、徒歩では10分足らずである(商店街も代々木駅前から続くもの)。だから、“南新宿駅が最寄り”といったところで、わざわざ1駅だけ小田急線に乗って新宿で乗り換えるくらいなら、新宿や代々木まで歩くよね、というごく当たり前の結論なのである。

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 とは言っても、周辺は新宿が近いとは思えないほど静かなエリアだし、代々木公園も徒歩圏内。さらに小田急線の下りに乗れば下北沢や代々木上原も近い。大都会の“過疎駅”とは、住環境としては最高であることの裏返し、なのかもしれない。

都会の過疎駅で静かな時間を過ごしてみては?

 秘境駅巡りは鉄道の旅の楽しみのひとつ。だが、地方ローカル線の秘境駅はまさに文字通りに秘境でなんにもなくて、コンビニはおろか自販機すらないのも当たり前。まだまだ暑さが続く中で、うかつに秘境駅を巡ると熱中症のピンチだ。その点、今回取り上げたような都会の中の過疎駅ならばこうしたことに悩む必要はない。過疎の駅に共通するのはその“静けさ”。人いきれで暑苦しさが増すだけの大ターミナルから逃げて、大都会の中の過疎駅でほんのひとときの静かな時間を過ごしてみてはいかが?

写真=鼠入昌史