東海大の弱点は「ピーキング」だった
東海大のウィークポイントは、ピーキングだった。青学大には箱根4連覇達成で得られた本番までのコンディションデータがある。つまりこの時期までにこのくらいの練習をして、このように調子を整えて行けば本番で100%の力を発揮できるという「勝利のメソッド」が確立している。少しでもコンディションやメンタル面で危惧がある場合はスタッフがサポートし、箱根を走る10人全員がほぼ万全の状態でスタートラインに立っているのだ。
一方、東海大は、昨年で言えば、箱根のための練習として本番3、4週間前も追い込んだ練習をしていた。さらに、箱根エントリー16名のチーム内競争が激化し、区間エントリー発表直前まで競いあった。例えば1000mを10本を走る練習メニューで、1本2分50秒で走ればいいところを、選手たちは箱根を走りたいがため、最後2分30秒という速さで削り合った。その結果、多くの選手の疲労が蓄積。箱根にピークが合わないまま本番をむかえ、力を出し切れずに5位に終わった。
「なぜ、本番前にこんな厳しい練習をしないといけないのか」
選手からそうした声が漏れ、両角監督と西出仁明コーチは、従来の調整法を変える決断を下した。まず、全日本以降、記録会などのレースに出場することをやめた。レースに出場すると事前調整と疲労を抜く期間で2週間は通常練習ができなくなる。その分、合宿を組み、箱根のための練習に時間を割いた。
選手の自主性を重んじてチームはひとつに
また、チーム全体でポイント練習はするが、あとは基本的に選手各自がコンディションを考え、選手の要望に応じて練習量を増減させた。自主性を重んじ、自らのやり方に責任を持たせたのだ。その結果、本番前に疲労を感じている選手はもちろん、怪我人もいなくなった。レースを控え、「走りたい」という飢餓感を持たせることにも成功した。
両角監督にも変化はあった。昨年は直前の選手変更を自分の勘ではなく、実績とタイムを重視して決め、それが結果に繋がらなかったことに責任を感じていた。今年の選手変更は、これまでの直前の練習の状態を踏まえて選手の調子を見て、自らの経験と目を信じて青学・原監督のように勘で選手変更をするつもりだ。
例年の反省から大きな変化を遂げた東海大だが、このやり方が成功するかどうかは箱根駅伝でしか検証できない。だが、こうした改革案は、選手のやる気を搔き立てた。