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いずれ誰もがいなくなるというのではない

 いまの広島カープは人間で言えば二十歳ぐらいに見える。

 じゅうぶん育ったが、まだ若い。これからである。ただこれからではあるが、つらい別れもある。高校の同級生なんかはどれだけ仲がよくても二度と会えない場合がある。二十歳すぎの頃、まだ高校生時代の思い出は鮮明だったが俺はそんな漫画を当時の『ガロ』に連載した。その通りであった。全然会えない。どこでなにをしているかもお互い知らない。SNSは万能ではない。秘めた不倫関係に限らず浮上しない関係もある。

 今回の菊池選手の早すぎるポスティング表明はFA移籍したことで若干の風当たりが生じた丸選手の援護だと私は思う。鈴木球団本部長がなぜいまそれを言ったのかと首をかしげたが、たしかにそうで菊池選手は口の堅い人だと思う。不調やケガも自分から言うことはないように思うし、本心はなかなか明かさないタイプと俺には見える。俺もそうだからだ。

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 もちろん菊池選手の言ってることは本心で、大リーグに挑戦する意思は強いのだろう。だが「なぜ、いま?」ということになると丸選手の風当たりを少しでもそらすためではないかと俺は思った。

菊池涼介の早すぎる表明は丸佳浩の援護なのかもしれない ©文藝春秋

 いずれ誰もがいなくなるというのではない。

 いずれまた誰かが出てくる。

 そして帰ってくることもある。

 チームの年齢は成長することも老いることもあるし若返ることもある。

 今季の展望という原稿テーマなのでそこを記すなら今季のカープは大躍進する選手が何人も見える。だから急に弱くなることはないと思う。ただ野球は相手のあるチームなので勝敗ということになるとやってみないとわからない。ただ、伸びるべき選手が伸びればファンがストレスを感じるようなチームになることはないと思う。もちろん丸選手と投手陣の対決も見ものである。ぜったいに見逃せない。お互いの表情がテレビ中継では大アップになるだろう。目頭が熱くなることが必ずある。ハンカチを用意しておこう。

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