韓国は亡命大使に手を差し伸べるのか?
韓国では、チョ氏の米国への亡命を巡り、「米朝関係に影響が出るのではないか」「北朝鮮でまた大々的な粛清がされるのではないか」と憂慮する声も上がっている。
複数の北朝鮮専門家に訊くと、「影響はない」「粛清も外務省ラインにはあるだろうが、人権問題や対外的なイメージを気にしている金正恩委員長は大々的な粛清などしないだろう」というのが大方の見方だ。しかし、「もし、チョ氏が韓国に亡命を希望した場合、現政権はすんなりそれを受け入れるのか」という問いについては、皆、はっきりとした回答を避けた。
太元公使のチョ氏に当てた手紙を読むと、韓国政府にその亡命を助けてほしいと求めているようにも感じる。
中道系の韓国紙記者は、「保守政権の朴槿恵前政権時に亡命した太元公使の場合は『北朝鮮の高官が韓国に亡命』と政権が大々的に広報しましたが、現政権は進歩派です。チョ氏が韓国への亡命を希望したら、金正恩委員長とは“友人関係”と言っている文在寅大統領にとってはかなりの負担になる。積極的には動かない可能性もある」と話す。
“ビッグディール”が気がかりな米国も及び腰?
7日、韓国の中央日報は、李明博政権の人物の言葉を引用する形で、「(米国が)北朝鮮との非核化という“ビッグディール”に及ぼす影響を憂慮して慎重に動いているのではないか」と報じた。
国に翻弄され、理由はなんであれ国を捨てる覚悟を決めても、受け入れには同胞国も腰が引け、頼みの米国さえ慎重な態度ならば、なんという苛酷な運命だろう。
太元公使は、チョ氏に当てた手紙の中で、韓国での生活が身辺警護もついて安全であり、「韓国には3万の脱北民がいる。脱北民は韓国の人のように豊かには暮らせないけど、それでも私は私なりに浪漫を持って生きているよ」と綴り、最後はこう締めくくっている。
「ソウルできみを待っているよ!
不安な日々を送っている君にこんな冗漫な長い手紙を送ってすまない。
再会を待ちわび、楽しみにしている」
チョ氏の無事を祈るばかりだ。