平成が31年で終了。年数が昭和の半分以下であったし、国が文化的に進歩したゆえの頭打ち感もあって、強烈な変遷はない時代であったと思う。じつは景気がどんどん衰退していたという、現在の体感や未来のなさは絶望的だけれど、思い返せば平成の日本はなだらかなものだった。

30年前の映画を観て目につくもの

 他の娯楽に客を取られたり、劇場料金の高さで客足が鈍ったりという傾向などによって、映画は衰退の影が濃厚になり、本来持っていたはずの豪華さという特色は薄れてしまった。東京では公道での撮影許可がなかなか取れないし、予算の縮小で大規模な作品は自然と減っていき、こぢんまりとした映画はさらに縮小の一途を辿ってあまり芳しくない状況だ。興行成績のトップは実写映画よりも、特撮とアニメが占めるのが当たり前の時代となった。

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 そんな平成のなかで大きな変化があったのは、インターネットと携帯電話の登場だ。平成の初め頃の映画では、一般の人が気軽にパソコンを扱ったり、携帯で電話やメールをしたりするなんてありえないことだった。今、30年前の映画を観て目につくのも、まだ人々がガラケーすら持っていないことだ。パソコンがウィンドウズ98や、同じく1998年発売のスケルトン仕様のiMac辺りで人口に膾炙していったことを思えば、平成のはじめはまだ、人と連絡を取る手段は電話がメインだった。

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「呪いのビデオテープ」と固定電話から貞子は現れた

 それがとても明瞭にわかるのは、じつはホラー映画だ。『リング』(1998年)で呪いが伝播していく際に使われたのは、VHSテープと家庭用電話だった。呪いのビデオテープを見たあと、固定電話にかかってくる不気味な電話を契機に貞子は現れる。今見ると、なんと懐かしいガジェットに憑いた幽霊であったことか。

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