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固定電話、VHS、ガラケー……映画『リング』『着信アリ』で懐かしいガジェットに憑いた幽霊たち

ホラー映画で振り返る「平成」

2019/01/21
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ガラケーの普及で、霊も「足跡」が残るように

 その後の約20年で、幽霊の現れ方は随分と変化を遂げた。怨霊たちも新アイテムの台頭とともにツールの乗り換えを始めて、携帯が普及すると『着信アリ』(2004年)へと変わっていく。固定電話は留守電を残さなければ着信記録が残らなかったが、携帯電話によって、一度コールすれば着信は痕跡が残るようになった。霊も足跡が残るようになったのだ。

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 VHSテープも、現在では実物を手にしたことのない若い世代も増えているだろう。そもそももはや、あの黒いテープを再生するための機器が自宅にない人がほとんどだ。『リング』シリーズは出演者や監督を変えながら、今でも続編が度々作られているのだが、近作では主人公たちはビデオを再生するために、まずは中古のビデオデッキを購入しに行くところから話が始まっていた。

映画『リング』のキャッチコピーは「ビデオに殺されるなんて」 ©iStock.com

幽霊たちが華麗に“対応”する鮮やかさに驚嘆

 心霊映画というのが、そもそもオールドスクールなのかもしれない。心霊動画が撮れたのなら、YouTubeにアップすれば人目を引ける時代だ。また幽霊の現れ方もやはり現代化していて、心霊スポットでの撮影時によく言われるのは、ビデオカメラが突然不調になる出来事だ。完全に充電したはずなのに、バッテリーが突然みるみる減ったり、現場は無音だったのに再生してみるとノイズが入っていたりという現象。平成に入って幽霊たちも、ろうそくの炎を掻き消すなんてアナログなことはせず、文明の利器に対応した登場の仕方をするようになった。

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 ガジェットを乗り越えた心霊たちの現れ方。最近の低予算心霊ホラーでは、携帯メールで呪いが拡散していく現象が当然のように登場している。平成に入ってから、VHS、CD-R、DVD-R、メモリーカードと映像の保存の仕方が変わっていく変化の速さに、幽霊たちが華麗に対応している鮮やかさに驚嘆するしかない。

固定電話、VHS、ガラケー……映画『リング』『着信アリ』で懐かしいガジェットに憑いた幽霊たち

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