昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

2019/01/21

genre : ライフ, 社会,

大月駅はスルーされがち

 そうこうしているうちに、ようやく電車は終点の大月駅に到着する。それまで乗っていた乗客たちもどっと降りて(終点だから当たり前なのだが)、どこに行くのかと思えばほとんどが富士急行線との連絡改札を抜ける。そう、大月駅は富士登山の玄関口である河口湖方面(途中には富士急ハイランドもある)まで走る富士急行線との接続駅だ。登山好きという編集氏に聞けば、「大月は登山好きには馴染みがある駅ですね。まあ、すぐ富士急に乗り換えるから駅の外に出たことはないんですけど」。こちらは目的が富士山でもドドンパでもないので、富士急に乗り換える人たちを横目に改札口を出ていよいよ大月駅の駅前に降り立った。

大月駅の山小屋風の駅舎
河口湖方面へ行く富士急行線との接続駅でもある

「夜中に乗り過ごして来る人、たまにいるらしい……」

 さて大月駅前、どんなところなのか。ひとことで言えば、まわりを山に囲まれた小さな町である。駅前には小洒落たレストランもあるし、居酒屋や甲州名物信玄餅の売店もある。が、駅前ロータリーからまっすぐ伸びる目抜き通りの先はすぐに山がそびえているし、駅の裏側にも切り立った絶壁が印象的な山が見える(この山は岩殿山といって、武田氏滅亡を招く裏切りを働いた小山田信茂の居城があったらしい)。駅舎は山小屋を思わせる丸太造りの平屋建て。1928年に建てられた古いものだとか。ただ、周囲を山に囲まれているおかげで平屋の駅舎はずいぶんと小さく感じられる。片隅に立ち食いそば店があって、ご当地そばでも食べられるのかと思って見たら、東京都内の駅にもあるチェーン店だった。

大月駅前のロータリーはこんな感じ
駅前すぐの通りの先には山が見える

 中央線に乗ってきた人はほとんど富士急に乗り換えてしまったから、駅前を歩く人はだいぶ少ない。タクシー乗り場で客待ちをしていた運転手に聞いてみた。夜中に乗り過ごして来る人っているんですかね?

「いや……オレは乗せたことないけど……ホントたまにいるらしい。東京まではさすがに遠いから、タクシーも辛いでしょう」

 そんな悲劇に見舞われた人のためだとは思えないが、駅前にはホテルもある。富士五湖観光などの拠点は富士急の終点河口湖付近で、大月にわざわざ泊まる人は少ないのだろう。それでも2軒ばかりのホテルの存在はありがたい。いざというときを考えても少しだけ安心感が湧いてくる。終着駅前のホテルというのは、ある種のセーフティネットなのだ。

富士五湖観光の拠点にもなっている