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引退した吉田沙保里さんに「結婚して幸せになってほしい」と言えちゃう人の考え方

「女の幸せ」とはなんでしょう

2019/01/19
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「結婚してるから、私の方が幸せ」という謎の優越感

「本当は私たちと何も変わらない普通の人」って思いたい。こうした「すげえ人を一旦自分の基準までダウンサイジングしないと気が済まない」症候群、特に女性有名人は標的になりがちです。都市伝説ですが、かつて某男性アイドルグループ事務所はタレントの衣装をなるべくダサくしていた、それはファンに「ああ忙しいから今の流行とかきっと知らないんだ……支えたい……」と思わせるためだと聞いたことがあります。だからスケスケの雨ガッパみたいなやつ着させたのか! 野球選手の私服の柄が大型犬だったり統率力のありそうなサンタクロースだったりするのもそのためなのかもしれません。工藤監督来季も頑張ってください。

 ただ「未婚」というだけで、吉田沙保里も有働由美子も「まだ幸せじゃない」と思える感覚、その裏には「(自分はスポーツですごい成績も残せないし紅白の総合司会もできないけど)結婚してるから、私の方が幸せ」という謎の優越感があるのではないでしょうか。さらにそれが「『女の幸せ』を犠牲にしてまで、仕事や試合に賭けている彼女だからこそ応援したい」という担保まで生み出している。これは単なる「歪んだ自己肯定」ではなく、意外となんだかんだ言われながらも結婚や出産という社会システムが存続している一つの要因だったりするのではないでしょうか。考えすぎですかね。

リオ五輪では日本選手団主将を務めた ©JMPA

“世間”という“舅姑”が認める女性とは

 残念ながら女性アスリートは「女性として微妙」だった場合の方が世間のウケは良いのです。こちらのコラムにも書きました高梨沙羅選手の化粧問題然り、女性アスリートは「化粧なんかする間もないくらい頑張ってる」か「したとしてもなんか微妙」じゃないと世間という舅姑は認めてはくれないのですよ。谷亮子が好感度を稼ぎ切れないのは、本来であれば「女性として微妙」カテゴリーの中にいるはずが「自分ぜんぜん違うんで」と勝手にそこから抜け出したからだと思うんです。勝手に野球選手と結婚して勝手にママになって勝手に政治家にもなった。「すごいアスリートだけど女性としては微妙」という優越感に浸らせてくれないどころか、劣等感まで与えてくる。劣等感に地球儀ウェディングケーキとご本人出演再現VTR『佳知・ヤワラちゃん 愛の軌跡 ~Power of Love~』までつけてくる。本当におそろしいです。

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「ママでも金」の谷亮子 ©文藝春秋

 そんな「世間の風」を感じたのが、『ミヤネ屋』で吉田沙保里選手の引退を報じた際、選手時代の「整理整頓が得意」エピソードを受けた宮根アナが発したこんな一言。