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立ち食いそばの聖地・川崎にある『ポツンと一軒家』系そば「大年」

2019/01/22

genre : ライフ, グルメ

note

創業39年、女将さんが1人で切り盛り

 風にゆれる緑色の暖簾がきれいだ。午前11時前に訪れたが、店にはすでに先客が3名ほど。みな地元の商店主さんやタクシーの運転手さんだ。その後も次々とお客さんが入店する。

「大年」は七十路の女将さんが1人で切り盛りしているカウンター6席程の小さな店である。今年で創業39年になるそうだ。

緑色の暖簾が風にゆれる一軒家の「大年」
メニューがめくれているのもご愛嬌

 挨拶をして、「天玉そば」(400円)を注文した。すると、つゆを1人前ずつ行平の鍋に移して温めていく。天ぷらは自家製。麺は近隣の製麺所の茹で麺を使う。

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「天ぷらそば」のじわじわにじみでる旨さ

 3分ほどまって着丼した。つゆはアツアツで、出汁のじわじわ効いた綺麗なむらさきのタイプである。天ぷらはつゆにひたすと旨さが花開く。茹で麺だがコシもあり、三位一体でバランスがすごくよい。「天ぷらそば」(350円)、「カレーそば」(410円)、「肉そば」(410円)あたりが人気である。

 また、「大年」では「カレー丼」(440円)や「肉丼」(440円)などの丼物を頼む人が多い。カレー丼は大きな赤い缶に入ったSBの業務用カレー粉と片栗粉や玉ねぎ、豚肉で餡を作る本格的なタイプで、つゆとスパイス感が融合した傑作だ。もちろん「カレーそば」も同じ作り方。「たぬき丼」(400円)は山菜やきのことたぬきを玉子でとじた丼である。

「天ぷらそば」(350円)は自家製の天ぷらと出汁の香るつゆがよい
カレー粉と片栗粉からちゃんと餡をつくっている「カレーそば」(410円)
「たぬき丼」(400円)は山菜やきのことタヌキを玉子でとじた丼

 突出した旨さなどない。しかし、じわじわとにじみ出る旨さとでもいえばいいだろうか、女将さんが培った味のバランスが素晴らしいといつも感心する。

 最近は腰痛も調子がいいし、カラオケの練習にも余念がないそうだ。帰り際に、女将さんから新年早々、頼もしい御言葉を聞くことができたのは収穫だった。

「人生は100年だそうですよ。まだまだあと20年はやらないと。だから、また、来てくださいね」

写真=坂崎仁紀

INFORMATION

大年

川崎市幸区下平間345

営業時間 月~土 7:30~18:00(麺・つゆ切れの場合早めに閉店)

定休日 日祝 

立ち食いそばの聖地・川崎にある『ポツンと一軒家』系そば「大年」

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