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視聴意識を考え抜いて生まれた「フライングスタート」

 象徴的なのはフライングスタートだ。正時(00分)に始まるのが当たり前だった番組開始時刻を56分からなど数分早めることにしたのだ。それは、泥臭い研究で実感したお茶の間の視聴意識を考え抜いたものだった。同様に、前後の番組の視聴ターゲットも揃え、視聴が途切れないような編成にした。

 また、マーケティング意識を浸透させ、わかりやすさと丁寧さを重視する番組づくりを徹底。装飾されたテロップやワイプを“発明”し、その工夫を隅々まで張り巡らせている。もちろん、こうした過剰な演出は時に批判に晒されるが、そうした声を上げる一部の視聴者よりも、大多数の“沈黙の”意思こそ重視した。なぜなら彼らは、ただ見ない、という厳しい判断をするからだ。そうした視聴者に寄り添った番組づくりと番組編成が日テレの強さの基盤になっている。

「変えない」日テレ、「若い」テレ朝

 では、日テレは今後も盤石なのだろうか。18年4月の改編(番組の入れ替え)率は、全日3.1%、ゴールデン0.5%、プライム9.3%と、いずれも1桁という低さ。ドラマ枠・ミニ番組枠を除けば、前年10月期と、2期連続でプライム帯無改編という異例の事態だった。もちろん、これは好調ゆえにイジるところがないからである。そもそも日テレはたとえ数字が出なくても我慢して続けることで視聴習慣をつけさせ、高視聴率に導いてきた。だから「変えない」ことは日テレの強さの要因のひとつだ。だが、一方で、それは新しいつくり手の活躍する余地が少ないことを意味する。つまり世代交代が進まないということだ。王者陥落が世代交代の失敗から起こることは、過去の歴史が証明している。

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 その意味で注目なのはテレ朝だ。『あいつ今何してる?』の芦田太郎を筆頭に、『激レアさんを連れてきた。』の舟橋政宏、『しくじり先生』(現在は終了)の北野貴章など、20代後半〜30代前半の若い世代の製作陣がチャンスを得て、成功している。前述のように12〜13年には一部時間帯で日テレを上回ったテレ朝は、もともと『相棒』や『ドクターX』など中高年層を中心に支持され、高視聴率を安定して獲れるコンテンツが豊富。これらと若い世代がつくるバラエティ番組が融合し、若い視聴者をも巻き込むことができれば、打倒日テレの最右翼になる。