あえて「知らねーよ」と読者が言いたくなるような表現にしてもらう
――ただ、「自分のことを書け」と言うと、個人的な思いばかりを語り出す人もいそうですが。
そうそう、それはダメなんですよ、矛盾しているんですけど(笑)。「情報のフリ」をしないと読んでもらえないんです。入り口は情報だけど、あとは自分の話でいいから、と言っています。
いきなり「あなたの話を書いてください」と言われても、みんな困っちゃいますよね。
たとえばカレー店の食べ比べをしたとして、一見すると情報記事なんだけど「練馬区の給食っぽい味がする」とか、あえて「知らねーよ」と読者が言いたくなるような表現にしてもらったほうが、人となりが伝わるし、読んだ後にも引っかかるかなあという気がするんですよね。すべて記名原稿で顔と名前を出しているので、「あいつは何なんだ」と思ってもらえれば、次回も「またあいつだ」と親しみが湧くんじゃないかな。顔なじみになれば、ちょっとつまらなくても許してもらえそうですし(笑)。
――地主恵亮さんの「妄想彼女」シリーズも、回ごとのバラツキはあるような気がするんですけど(笑)、一人の人間のドキュメントを見続けているようなおもしろさがあるから、ついつい毎回読んじゃいますよね。
そうそう(笑)。地主くんはそれがすごくうまく行っている例ですね。彼はすごくたくさん書くんですよ。ほかの人は「月2回くらいにしてください」とたいてい量を減らそうとするのに、彼は「毎週書きます」と言うんです。おもしろさの高低差はあっても、毎週出てれば読者に覚えられるからいいんですよね。
地主くんを追いかけている読者も多くて、そんなにおもしろくなくても「また地主がやってるぞ」となる。完全に読者となあなあの関係ができてる。なあなあがベストなんです(笑)。目指しているのはなあなあです。
――あとデイリーは下ネタとか、「全裸で××やってみた」みたいなことをやらないですよね。
ライターも編集も女性が多いから、企画会議で言いにくいことはやらないですね。でも言われてみれば、何でやらないんですかね……やっぱりモテたい気持ちがどこかにあるんですかね(笑)。
――それは大事なことですよね。おもしろくても、モテなかったら意味が……
ないです! ライターは女性のほうが少し少ないくらいですね。読者は、以前は6:4で女性が多かったんですけど、最近は半々くらいですね。何で女性が多いのかはよくわからないんですが、「全裸で××やってみた」みたいな男子校ノリに走らなかったからなのかな。
――えてして男子校ノリになりがちですもんね。
そうなんですよね。ライターと編集者の集まりが男ばかりになると、すぐ下品な話になっちゃって、そのノリで記事が作られちゃう。会議もなるべく男女が集まるようにしています。