オンラインメディアで活躍するさまざまなセンパイに成功の秘訣、メディアの未来像を伺うシリーズ。3人目のセンパイはSmartNewsの藤村厚夫さんです。キュレーションとは? アルゴリズムとは? ページをめくる感じを追求する理由とは? 人間とテクノロジーの関係にワクワクするお話をお伺いしました。

SmartNewsはエンジニア集団

――キュレーションメディアやニュースアプリが、各社それぞれに特色を打ち出しているなかで、「SmartNews」にはオリジナルコンテンツもありませんし、アプリのデザインや機能にひと目でわかる特徴があるわけでもありません。でもSmartNewsをしばらく使ってみて感じたのは、使い心地のほど良さでした。テレビをザッピングしたり、雑誌や新聞をパラパラとめくっていくときの感触に近いものがありますね。

 

 それはとても嬉しいご指摘で、少し口幅ったい表現になってしまいますが、SmartNewsはコンテンツ企業ではなく、すごいエンジニア集団なんですね。日本でだけでなくアメリカ西海岸からも先端的な技術者を集めて、技術部門も経理や財務もすべて、SmartNewsというプロダクトだけに力を注ぎ込んでいます。いろいろな事業部に分かれていないということは、外部からは見えないことですがとても重要なんです。

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 アプリも一目ではわからないところにすごい技術を入れてもらっているのですが、技術が先に見えてしまうのは本末転倒だと思うんですね。使い込んでいくうちに良さがわかってもらえるように頑張っているつもりです。

 

 ザッピングはまさにその通りでして、ニュースのジャンルごとに「チャンネル」に分けて表示しているのですが、たとえばチャンネルを横にめくっていくときにページが指に追随するほんの0.01秒台の反応時間などで、iOSやAndroidのデフォルトの機能にはまったく納得していないんです。そういった部分の意識にものぼりにくい快適さについては、同種のアプリとはかなり異なるのではないかと自負しています。

――記事を読まずにチャンネルを横断しているだけでも、情報の断片はしっかりと残るような感覚があります。

 めくっていくときに、記事のタイトルがちゃんと目に入るように工夫しています。たとえばタイトルの中の品詞などを自動的に判別して、適切な箇所に改行を入れるアルゴリズムになっています。字詰めもアルゴリズムで調整しますし、長体をかける(文字の横幅を狭くし1行あたりの文字数を多くする)こともあります。

 

――新卒でウェブメディア企業に就職した人だと、「長体」という言葉も知らないかも知れませんね。デジタルな技術を精錬させていくと、かつての印刷技術に近づくというのは興味深いです。でもなぜ、そこにこだわるのでしょう?

  我々の哲学にも関わることなのですが、お目当てのニュースやカテゴリーを読む「まで」にこそ、貴重なメディア体験が詰まっているのではないかと思っているんです。新聞であればまずテレビ欄を見る方や、スポーツ欄から読む方も多いと思うのですが、バサバサとページをめくる間に社会面の見出しが印象に残ったり、目当てではなかった記事を読み出すこともありますよね。雑誌も同じだと思います。そういった意図せざる多様なコンテンツ体験を誰もがしていて、SmartNewsもそんな貴重なメディア体験を提供するものでありたいと考えているんです。