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「あまり期待しないで下さい」と語った理由

 春季キャンプB組の最初の実戦(2月10、11日のシート打撃)ではサウスポーの笠原投手から逆方向にホームランを放つなど、この2日間の4打席で3安打1四球。全方向に打ち分けました。オリックスの吉田正尚選手をイメージして「投手に向かって入っていった中で腕を放せるようにしたら、変化球にも対応できるようになって、左ピッチャーも見えるようになってきました」と手応えもばっちり。昨季は明らかにボールになる変化球にも手が出てしまっていたといいますが、今季は違います。今キャンプでは手術明けで実践復帰を目指すサファテ投手と対戦する機会もありましたが、“キング・オブ・クローザー”の変化球を追い込まれてからも見逃すことができ、コーチ陣からも評価を得ました。日々課題を克服してきたことで少しずつ自信もついてきました。

 とはいえ、大本選手はあまり自信あふれるタイプではありません。言い換えれば謙虚なんですが、取材していても「いやいや僕なんて……」というへりくだった言葉がよく出てきます。以前、『月刊ホークス』の育成選手紹介ページ用にインタビュー取材をした時のことです。“ファンの皆さんに一言”という問いに対し、大本選手は「あまり期待しないで下さい」と答えたのでした。彼の言葉を尊重してそのまま掲載しましたが、「もっと強気になりなさい」と月刊ホークスを読んだご家族に怒られたそうです(笑)。

 たしかに、「期待しないで下さい」なんていう選手聞いたことなかったですが、これには彼なりの“野心”が込められていました。「僕なんてまだ皆さんに知られていませんから、その知らない間に水面下で力を付けて詰め寄って、一気にグンっと行きたいんですよ」とニッコリ。謙虚な中にも、以前より強い決意と自信が感じられました。

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 入団会見で大きく掲げたプロ野球での目標は「ホームラン王」。でも、今の目標は「何が何でも2軍で試合に出続けること」。一瞬、目標が小さく聞こえてしまいました。育成選手に目標を聞くと、ほぼ全員の選手が「支配下登録」と言います。もちろん当然のことなんですが、大本選手は地に足を付けて冷静に話しました。「僕はまだ3軍でしかプレーしてないわけですから、まずは2軍戦に出て見てもらえない限り支配下は見えてきませんよね」とまずは支配下へと勝負できる舞台に立つことを着実に目指します。

 そんなことを言いながらも、今キャンプではA組の紅白戦や対外試合でベンチ入りメンバーに呼ばれるなど、今の大本選手には追い風が吹いています。「良いスイングをたくさん見せてくれてるから、上でのチャンスをもらえてるんだと思いますよ」と新井コーチも期待を寄せる“ミニギータ”こと大本将吾選手に心の中でちょっとだけ期待していてください(笑)。

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