片や、もう若くないと自覚した途端「いくつになっても若々しく知的に、いまを生きたい!」という願望がむくむくと湧いてきました。たとえ年を重ねても、世間に疎い乗り遅れ中年にはなりたくないのです。しかし、自己防衛レーダーは加齢とともに劣化している。それに気付かず的外れな甲冑を用意して、ゾッとするのが四十代の入り口から。
七分丈レギンスはアウトだったなんて、私はまったく知らなかったよ。まさか自分が「若い人の間では、こういうのが流行ってるんでしょ?」と見当違いな曲をカラオケで歌うようになるとはねぇ。
かと思えば、思春期となんら変わらぬ虚栄心に振り回され自撮りを加工したり、いくつになっても京都を愛する女になれない自分を恨んだり、私が着用してしまう甲冑は、理想とする大人の甲冑スタイリングには、いつまで経っても辿り着きません。戦いにおいて自分を守り、飾るための甲冑なのに、甲冑選び自体がすでに戦いの様相を呈しています。365日甲冑着回し術、この戦は、そう簡単には終わらない。
女の甲冑、着たり脱いだり毎日が戦なり。ならば、手持ちの甲冑と未入手の甲冑、それぞれ身につけ精査してみようではないか。フランス人は10着しか服を持たないと言うし、ときめくものだけ残せと言う人もいる。思い込みのストッパーを外し、似合うか否か、必要か否かを頭で決めつける前に試してみる。無理だったら大袈裟に傷付かず、ハハハと笑って次へ行こう。どうしても手放せないなら、納屋にでもしまっておけばいい。
膨れ上がったクローゼットを前に、私は立ち上がりました。
(「まえがき」より)