颯爽とデビューした千葉ロッテマリーンズの韋駄天男も今年でプロ10年目を迎える。荻野貴司外野手にとってのこれまでの9年間は怪我の連続。それでも確かに積み重ねてきた数字がある。通算173盗塁。毎年のように怪我に見舞われ、まだ一度も規定打席に到達したシーズンこそないものの二桁盗塁はルーキーイヤーから継続中だ。

「怪我や不振などで1年間を通じて一軍にいた事がない中で9年間、続けて二桁盗塁が出来ていることは自信にしたいと思っています。盗塁は自分に一番、求められているもの。塁に出たら常に狙う意識を持っている」

通算173盗塁を記録している荻野貴司 ©梶原紀章

10年連続二桁盗塁の大台到達へ

 紆余曲折の日々の中で積み重ねてきた数字だけに本人も盗塁数には誇りを持っている。新人の年から10年連続二桁盗塁を記録した選手はプロ野球史上8人しかいなく、荻野は今年、史上9人目の新人から10年連続の二桁盗塁に挑む事になる。そして節目の200盗塁まではあと27個。これまで自己最多は13年と17年の26個。おのずと自己最多を更新することで大台到達となる。プロ野球で規定打席に到達したシーズンが1度もなく200盗塁に到達したのは14年のジャイアンツ鈴木尚広氏(現ジャイアンツコーチ)ただ一人であることを考えると、その数字の凄さが分かる。

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「27個で200盗塁。そこを自分の中での最低目標に設定しています。そして昨年は途中で戦線離脱をしてチームに迷惑をかけたので、まずは1年間を通して一軍にいることをもう一つの最低の目標に設定をしたいです」と荻野。昨年の無念を胸に自身が誇りにする盗塁の数字を一つ一つ積み重ねながら、新たなシーズンに挑む。

「昨年は全試合出場を目標にしていたので悔しかったです。『またか』と周囲からも言われたし、そういう声が聞こえてきた。自分もそう思う。本当に悔しい」

 忘れもしない昨年7月9日の埼玉西武戦(メットライフドーム)の6回表。右手首にボールを受けた。当たった瞬間は分からなかった。しかし大事をとって交代を告げられロッカーに戻ると手の感覚がなかった。指が動かない。「これはマズいと思った」。患部はどんどん腫れて青くなっていった。立川市内の病院に直行。痛み以上に、力を入れたくても入らない状態に事の重さを悟った。病院のレントゲンで見た骨の画像は衝撃的だった。本人曰く「バキバキに折れていた」。複雑骨折。医師からの診断結果を聞くまでもなく、復帰まで相当な日数を要することが容易に想像できた。初めてのオールスター出場を4日後に控えての戦線離脱だった。それまで78試合に出場し打率.287、2本塁打、25打点。盗塁は20個を記録し盗塁王のタイトルを射程に捉えていただけに無念のリタイヤとなってしまった。