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半蔵門線の“ナゾの終着駅”「南栗橋」には何がある? 『翔んで埼玉』どころか『翔んで茨城』?

2019/03/18

genre : ライフ, 社会,

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渋谷駅から1時間半……南栗橋駅に到着

 越谷あたりまでは高架の区間も多く、団地やマンションが立ち並ぶ車窓。越谷から先も沿線が住宅街であることは変わらず、違うのはマンションよりは一戸建て住宅が目立つようになることくらいである。ずっと関東平野を走っているから窓の外を見てもそれほど変わり映えはしないが、それでも春日部駅を出たあたりからすこしずつ田畑が増えてくる。東武動物公園駅から日光線に入れば、いよいよ南栗橋近し。すっかりベッドタウンどころか広々とした田畑を見て、よくこんなところまで乗り換え無しでこれるなあと思わず感心してしまう。

 渋谷駅から半蔵門線・スカイツリーライン直通の急行に乗って約1時間半、ようやく南栗橋駅に着く。首都圏方面からの列車はすべて南栗橋止まり。さらに北に向かって乗り継いでいくと、日光・鬼怒川。そしてもっと先に行けば関東を抜けて会津も見えてくるくらいだから、ある意味で関東の通勤圏内の北限駅といったところか。

橋上駅舎の南栗橋駅(西口)
駅東口のロータリー

「最近マンションもできているし、住んでいる人は増えてますよ」

 さっそく駅の外に出てみると……。などともったいぶるまでもなくて、こういう終点の駅というのは何があるわけでもないのが常である。線路に沿って少し北で東北新幹線と交差して、そのさらに北には東武鉄道の南栗橋車両管区(車両基地)がある(だから南栗橋が終点になるのだ)が、取り立てて名所というほどではない。駅の周りを歩いても、広々とした駐車場や駐輪場がいくつもあるくらいであとはひたすら住宅地である。駅を取り囲むように駐車場があるのはクルマ社会の北関東の駅の特徴のひとつだと思っているが、埼玉県も南栗橋まで来ればそうした特徴を備えているのだ。

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 が、さすがにそれで終わって帰るわけにも行かないので、すこし足をのばしてみる。すると、南栗橋駅周辺の住宅はどれも真新しいものばかりであることにすぐに気がつく。もしかして、最近の埼玉フィーバーに乗って南栗橋も急上昇中の町なのか。

「そうですねえ、最近マンションもできているし、このあたりに住んでいる人は増えてますよ。ちょっと前まで空き地だったところに家ができたりしますしね」

 道行く人に声を掛けると、こんな答えが返ってきた。渋谷まで1時間半かかるとはいえ、座って乗り換え無しで通勤できるのであるから意外と便利なのだとか。それにひとつ先の栗橋駅まで行けばJR宇都宮線にも乗り換えられる。そうすれば大宮や池袋、新宿だってそう遠くはない。これまたナゾの終着駅の常、新興住宅地として少しずつ発展しているようだ。

南栗橋駅前、少し先には住宅地が広がっている