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相次ぐアジア系への差別事件

 2年前、アジア系への差別事件が相次いで報じられた。ユナイテッド航空のシカゴ発の国内便でオーバーブッキングがあった。すでに搭乗済みの男性客が抽選によって選ばれ、別便に振り替えるよう依頼されたが、男性客は断った。職員との口論の挙句に男性は空港警察官によって座席から無理やりに引き出され、通路を引きずられた。その際に男性は頭部を負傷し、流血の惨事となった。男性はベトナムからアメリカに移住した医師だった。

ユナイテッド航空の便から引きずりおろされた男性


 同じ年に、カリフォルニア州でエアビーアンドビーを予約していた女性が、車で宿まであと数分の地点で宿主から宿泊拒否のテキストメッセージを受け取った。抗議する女性に対し、宿主は「アジア人だからよ」「これがトランプが大統領である理由」「外国人に指図はされない」と返答した。女性は3歳でアメリカに移住し、米国市民権を取得した法科の学生、つまり「アメリカ人」だった。

「アジア系であれば人間以下で、ゴミクズみたいに扱われる」

 ユナイテッド便の男性客がアジア系であること、および医師であることはコンピュータによる抽選には関係していないはずだが、男性は口論の途中で自分は医師であると口にしている。職員や空港警察官が男性の職業を気に留めなかったとしても、男性がアジア系であることは一目瞭然であり、男性がもし白人であれば、あれほど暴力的に連れ出されただろうか。事件を知ったアジア系アメリカ人の多くが感じたことである。

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 エアビーアンドビーの宿主も女性が法科の学生であることは知らなかったと思われるが、名前からアジア系であると察した。女性はテキストでの口論直後に車を降り、雪嵐のなかに佇んで涙ながらに以下の訴えを行い、ビデオに収めている。

エアビーアンドビーの宿泊を拒否された女性


「とても傷付いた。アメリカに23年暮らして、こんなことが起こって、心が刺された。法に従おうが、他人に親切であろうが、他者に快く接しようが、関係ない。アジア系であれば人間以下で、ゴミクズみたいに扱われる」

「文化」は愛されても「人」は愛されているのか

 漢字のタトゥーやアニメがいくら人気を博そうとも、マイノリティであるアジア系自身は相変わらず、その存在を尊重されにくい。これがアメリカの現実だ。

 かつ「民族/出自(中国系、韓国系、日系など)」「アジア系」「アメリカ人」と、少なくとも3つのアイデンティティを持ち、人によっては「移民」や「二世」、さらに「他の人種とのミックス」が加わることになる。それら複数のアイデンティティが時にはひとつずつ顔を出し、時には順位が入れ替わり、時には渾然一体となる。多民族社会で人種民族マイノリティとして暮らす者の定めであり、日本人もひとたびアメリカに移住すれば、この複雑なメンタリティと共に生きていくこととなるのである。