上林発言に対する秋山のアンサーとは
「ビッグマウスって言ったらそうだけど、言った以上、やらなきゃいけないって思っているからね。(上林は)『僕(=秋山)よりホームランを打てる自信はあります』というのはあると思います。僕も彼よりホームランを打てると思ってないんですよ。(ヤフオクドームは)球場狭いし、まず。
じゃあ打率であいつに負けたら、もうね。結構、同じタイプじゃないですか。スラッとしていてとか。だから若かろうが、ベテランだろうが、負けられないポイントはそこだなって自分で再認識しているところもあるし。
僕とか柳田に『早くメジャーリーグに黙って行ってくださいよ』と(新聞記事に)書いてあったじゃないですか。でも僕が彼に言いたかったのは、『いなくなってから1番になりたいのね?』っていう感じ。なんか矛盾してるなって思って。時代を終わらせたいのは、メジャーに行ってちょっと(競争が)落ち着いたところでスルスルって自分で取りたいみたいなことなのか、2人がいる今年とか来年までに絶対何とかしますなのか。文章からは2人いたね、上林が。どっち?」
そう言って言葉を止めた直後、「今年は首位打者争いに割って入るのでは?」と筆者の予想を振った。
「誰? 上林? いや、うーん、彼の場合はホームラン打てるからね。狙いたいとか、振りたいってなったときに。だから、(長打よりヒット優先という)徹底はしてないですよ。彼は23歳でしょ? その人間が、僕みたいなスケールで野球をやっちゃダメだなって思うんですよ。僕はある程度、飛ばすことに限界を感じて(ヒット優先の打撃を)やり始めたから。彼の場合、3割30本行けるから、そっちを目指せばいいんじゃないっていう。それは考え方なんですけど。能力は高いし、取り組みもね。ボソボソってしか喋らないですけど的を射ているし、野球もよく見ているし。他球団からすれば、驚異。ああやってギラギラしているでしょ?」
一連の発言は、秋山から後輩へのエールに聞こえた。
「『翔吾さん』って俺のことを呼んでいるんだな」
3月9日、侍ジャパンのメキシコ戦で上林を取材する機会があった。オープン戦で打率.114と苦しむ最中、メキシコとの初戦で1番を任されると5打数3安打。見慣れぬ相手に初回のファーストストライクから振りにいくなど内容も伴い、「今後も1番を打ちたいですか」と質問された。
「(秋山)翔吾さんとかいますし、レギュラー陣が入ってきた中でどうかなというところがあるので。あまりこだわりはないですね」
その記者が質問を続ける。レギュラー陣が入ってきて、選ばれたら?
「選ばれて、シーズンで結果が出て、自信がもうちょいついてきたら打ちたいと思ってくると思うんですけど、今はまだかなわないですし、結果でも勝っていないですし。まずはそこで勝っていかないと、1番とかそういう先は見えてこないと思います」
自主トレ中のビッグマウスとは違い、実に謙虚な発言だった。もちろん、打撃の状態が思うように上がってこないこともあるだろう。
では、「今はまだかなわない」と聞いて秋山はどう感じただろうか。
「見ましたよ、その記事。あいつ、『翔吾さん』って俺のことを呼んでいるんだなと驚きましたね」
3月23日のオープン戦後、そう言って笑った秋山はメットライフドームの駐車場から室内練習場に続く通称「けもの道」へと歩き始めた。
着実に準備を進める秋山はこの1週間後、開幕3連戦を迎える。そこに上林が出場するかはわからない。試合結果がどうなるかも予想しづらい。
ただし、3番・センター秋山の先発出場は確実だ。キャプテンとして臨む初の公式戦になる。
「たぶん、開幕となるとみんな構えるじゃないですか。それで打てる・打てないが絶対出てくるし、そこに勝つ・負けるが乗っかる。別にキャプテンだからというのではなくて、僕もどういう結果になるかわからないし。もし3連勝してもこれで終わりじゃないし、『次の試合、大事だよ』と言えるのか。3連敗しても『この後、1個勝とう』という話になると思います」
開幕3連戦が終わった後、果たして秋山はチームメイトにどんな声をかけるのか。その言葉を聞きに、筆者も福岡に行ってくる。
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