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オリックス・西村徳文監督に学ぶ“さとり世代”との接し方

文春野球コラム ペナントレース2019

2019/03/29

「開幕投手」

 読んで字の如くプロ野球の場合シーズンの開幕戦、言わばペナントレースの元旦に先発登板する投手の事である。日本のプロ野球に於いては基本的にエースと呼ばれる投手たちがその名誉ある役割を務めてきた。2005年以降のORIX Buffaloesも例に漏れず2007年までは川越英隆投手が、そして2008年以降は基本的に金子弌大投手(旧・金子千尋/現・日本ハム)が開幕投手を務めている。その金子、そして昨シーズンの開幕投手・西勇輝(現・阪神)がチームを移籍した今季、ORIX Buffaloesはプロ3年目の23歳右腕・山岡泰輔にその使命を託した。事実上の新エース誕生である。

ケチが付いてしまった23歳・新エース誕生の門出

 しかしその山岡のオープン戦最終登板(3月22日京セラドーム)で、とあるニアミスが起こっていたのをご存知だろうか。ベースカバーに遅れた山岡が内野安打を許すと、続いて1塁への悪送球。これを指揮官は緩慢プレーと激怒し、一度は開幕投手を白紙に戻すと記者たちに口にしたのだ。言わば根幹からの見直しである。結局は面談の末に再度山岡に開幕を託す事と決めたのだが、新エース誕生の門出にいささかのケチが付いた形となってしまった。

 いやいや、雨が降って地盤が固まったのだから何ら問題視する事はないのだが、こう言っては何だが「監督、少し厳し過ぎない?」である。世間一般の23歳はもっと緩く生きているし、一般的な社会人であれば彼らの多少の緩慢プレーは会社で日常的に目にするのではないだろうか。全員が全員ではないがそんな緩めの世代である。LINEで退職届を出すウルトラCをやってのけるビックリ世代なのだから。そう世間では彼らのことを「さとり世代」と呼んでいる。

 ましてこの程度のプレーはORIX Buffaloesの守備に於いては日常茶飯事。正直、我々にしたら「またかいな!」くらいの事だったのだが、それを歴戦の指揮官・西村監督は大きく問題視した。何故なのだろう。そこまで激怒する事なのだろうか。一見温厚そうな指揮官の怒りの裏に何があるのだろうか。無事山岡で開幕を迎えたこの日だからこそ、指揮官の怒りの裏にあるメッセージについて少し考察してみたいと思う。

山岡泰輔のミスに対して緩慢プレーと激怒した西村徳文監督 ©時事通信社

2005年以降の開幕投手たち

 と、指揮官の思惑の前に、まずはここで、2005年以降の主な球団の開幕投手を振り返って見たいと思う。まずは宿敵・福岡ソフトバンクホークスから。2005年以降、ソフトバンクは長く斉藤和巳、杉内俊哉、和田毅がエースを争う形となっていた。しかし2012年に摂津正が開幕投手を務めると、そこからは5年連続の摂津での開幕。完全にエース交代とあいなっている。その摂津のあとは2017年が再び和田毅、2018年はいよいよ千賀滉大が開幕投手を務めた。千賀の今後数年の状態にもよるが、このチームは完全にエースを確立できていると言えるだろう。

 同じくエースの確立に成功しているのが東北楽天イーグルスだ。2007年から5年連続で岩隈久志、2012年に田中将大を挟んだ後、2013年以降4年連続で則本昂大。肘のクリーニングさえ無ければ基本的に今年も則本だったと考えれば、このチームも確かにエースを確立出来ていると言えるのではないだろうか。個別データは割愛するがロッテ、西武、巨人、阪神もエースを確立していると言えるだろう。

 逆にエース確立に苦戦しているチームはどうだろうか。例えば北海道日本ハムファイターズは2007年から2011年までの5年間はダルビッシュ有が開幕投手を務めている。しかし2012年以降、2度以上開幕投手を務めたのは大谷翔平のみ。大谷が移籍した現在ではいささか絶対エース不在の感は否めないのではないだろうか。同じく横浜、中日も数年スパンで開幕投手を務めるエースが出てきていない。決してエースの存在だけが勝敗を左右する訳ではないのだが、やはりエース不在のチームは苦戦を強いられる傾向にあると言わざるを得ないだろう。