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オリックス・西村徳文監督に学ぶ“さとり世代”との接し方

文春野球コラム ペナントレース2019

2019/03/29
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西村監督の成分の半分はバファリンと同じく愛情で出来ている

 そしてこの2019シーズン。パ・リーグ各球団のエース事情は大きく変わると予想される。ORIX同様に、ロッテは「ロッテファンが待ちに待ちすぎた意中の恋人」エース石川時代へのバトンタッチ、西武は「イチロー曰く、こんな良い子ちゃん先発左腕は見た事がない」菊池雄星の移籍、その他多くの球団が新エースの確立を求められるシーズンと言えるのではないだろうか。だからこそ今シーズンの開幕投手が、今後数年連続のスパンで開幕投手を務める事が多くの球団に求められる課題なのだ。

 長く金子時代が続いたORIX Buffaloes。ここから数年、開幕投手が毎年違う事となれば恐らくは投手事情に苦しむ事となるだろう。怪我、不調、さまざまな事情があるにせよエースと呼ばれる投手たちは数年に渡り先発投手の柱としてチームに君臨する事を求められる。クオリティが高く、それでいて旬がとてつもなく長い投手がエースの絶対条件であると言えるのだから。

 そして下克上を成し遂げた2010年の西村監督の前に立ちはだかったのも金子、ダルビッシュ、岩隈、涌井と言った数年連続で開幕投手を務めたその絶対エースたちだった。もちろん西村監督率いるロッテの成瀬もまた球界を代表するエースであった事からも、西村監督は誰よりもエースの存在を強く意識しているのではないだろうか。これから数年、常勝軍団へと生まれ変わるチームの再構築を託された指揮官にとって、その絶対エースを確立することは至上命題であるのだろう。

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 だからこそ山岡には目標を大きく、今シーズンだけの話ではなく、数年連続というスパンで開幕投手を務める「球界を背負う大エース」へと成長して欲しいとの願いがあったのではないだろうか。いや、成長させると自分に課しているのかもしれない。そう考えた時「緩慢プレーなどありえない話だ」と激怒した指揮官の言動も実は「あえて」の物だったのではないだろうかと思えてしまう。というのも元々「しらけ世代」の西村監督なのだ。頑張って欲しい相手に「頑張れ」と言っても上手くフィードバック出来ないことを誰よりも認識しているのだろう。のびのびとやらせる所はのびのびとやらせ、兜の緒を締めるタイミングで絶妙に叱咤してみる。山岡と若月健矢のバッテリーなど、それが顕著に表れていると思う。西村監督。案外、理想的な上司だったりするのではないだろうか。目的遂行の為に各人に沿った手法を用いる手腕。部下たち個人個人の性質をよく理解していなければ出来ない手法だろう。言ってしまえば愛情なのだ。断言しよう! 西村監督の成分の半分はバファリンと同じく愛情で出来ている。

 いずれにせよORIX Buffaloesの未来は山岡泰輔に託された。緩めの世代23歳の若きエースが開幕戦のマウンドに立つ。指揮官との大きな信頼関係を胸に開幕戦のマウンドに立つのだ。そう、チーム内より圧倒的に多岐にわたる様々な世代のファンたちが見守る開幕戦のマウンドに。頑張れ23歳! 恐らく「氷河期世代」が一番口うるさいぞ、きっと。

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