かつてないほどの最高の状態で千葉ロッテマリーンズは3月29日、イーグルスとの開幕の日を迎えた。2月1日の春季キャンプ以降、選手たちに大きな怪我やコンディショニング不良はなく、この日を迎えることが出来た要因の一つに組織として緻密な体調管理を行ってきた事が挙げられる。
今年は選手たちの体重や体温だけではなく脈拍と血中酸素飽和度を毎朝、計る事で疲れ具合のバロメーターとしてきた。血中酸素飽和度は血液中の酸素の濃度の事で、血液中の酸素の濃度が満タンで100%とし99%から96%で正常値と判断されている。逆にこれより下回っていると体調不良の傾向にあり、疲れも溜まってきているという判断を下すことが出来る。手の指の皮膚の表面部分から簡単に血中酸素飽和度を導き出す特殊な測定器具を使い、測定を義務付け毎日、継続的に数値を出すことでデータ化し、その選手の現状、そしてどの時期から疲れが生じているかを判断し首脳陣やメディカルスタッフ内で共有することが出来ているのだ。
失速の原因の一つに挙げられた夏場の疲労
楠貴彦コンディショニングディレクター兼育成統括は「今年はトレーニング担当やトレーナー部門とコンディショニング部門がこれらの情報を共有し、さらに各コーチ陣もデータを共有することで選手が怪我をすることや状態を落とすことが未然に防ぐことが出来ていると思う。これからもしっかりとモニタリングをしながら継続的に続けていきたいと思う」と胸を張る。
数値に基づいて選手が疲れていると判断した場合は、その選手の練習メニューを減らす施策を行ったり、積極的にリカバリーとしてマッサージを受けることなどをアドバイスするなどして選手の疲れがピークにならないように配慮をすることでベストパフォーマンスを導き出そうとしている。さらにこれまでは首脳陣と担当スタッフで共有していたデータをシーズン中は、それぞれの選手が自分たちのタブレット端末にてグラフなどで見ることで自分たち自身で状態を把握できるように努めるプランを進行中だ。ここまで各選手に支給するタブレット端末は野球におけるデータ分析が主流ではあったが、今後はこのような自分たちのコンディショニングを把握するものとしても活用される時代に入る。
昨シーズン、千葉ロッテマリーンズはオープン戦で8勝4敗2分けの12球団2位。その勢いのまま、シーズンに入ると前半戦は随所にキラリと光るものを見せ、善戦をした。交流戦は11勝7敗の3位。7月1日には37勝34敗で3位に浮上。首位の埼玉西武も射程圏に捉え、優勝の可能性を秘めていた。しかし、だった。7月に入ると歩みはピタリと止まる。7月は7勝10敗3分け。8月に9勝14敗。9月は5勝14敗で10月は2勝9敗。開幕から全力疾走を続けたチームは突如、失速した。
歯止めが利かなくなったマリーンズは転がり落ちていった。様々な敗因がある中の一つとして挙げられたのが夏場の疲労。特に野外球場を本拠地とする千葉ロッテマリーンズはドーム球場を本拠地とするチームと比較すると夏場のプレー、練習による疲労度は大きくなる。その状況下でどのような練習をするのがいいのか。なにか工夫、対策はないのか。シーズンオフの期間、首脳陣は度々、意見交換を行い、対応策を協議してきた。そして導き出された答えの一つが選手の体調の数値化とそのデータの共有だった。