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スワローズ公式ダンスチーム「Passion」の元リーダー・彩友さんが語る“背番号1”への思い

文春野球コラム ペナントレース2019

2019/04/18
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「もう一人の」背番号《1》の存在にようやく気づく

 Passionの活動を続けていくうちにすぐに「スワローズ」というチームに魅了された。好きな選手もたくさんできた。現在はソフトバンクに在籍している川島慶三、同郷である大松尚逸や谷内亮太、「笑顔がステキな」雄平……。多くの選手の名前が挙がる中で、「あえて一人に絞るとすれば?」と問うと、彩友さんは笑顔で応える。

「やっぱり、青木(宣親)選手ですね」

「どうしてですか?」と、その理由を問う。

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「Passionメンバーには、それぞれ背番号が与えられるんですけど、私は1年目からずっと背番号《1》でした。当時、青木選手も《1》だったので、勝手に親近感を抱いていたんです。Passionが結成されてすぐ、神宮球場のグラウンド内でメンバーやスタッフさんと写真撮影をしていたときに、青木選手が“背番号《1》は誰なの?”って声をかけてくださって、“頑張ってね!”って言ってもらったことがあるんです。そんなこともあって、青木選手はずっと応援していました。その青木選手がヤクルトに戻ってきた年が、私の最後の年だというのも、縁を感じています(笑)」

 この言葉を聞いて、僕がずっと抱いていた「違和感」は最高潮に達した。僕は決定的に勘違いをしていた。かつて、背番号《1》を背負っていた若松勉に憧れて以来、池山隆寛、岩村明憲、青木宣親、そして現在の山田哲人まで、僕は歴代の「ミスタースワローズ」と呼ばれた背番号《1》の男たちが大好きで、彼らを懸命に応援し続けてきた。だからこそ、青木がメジャーに行った12年から、山田がこの番号を背負う16年までの4年間のことを「背番号《1》の空白期間」だと、僕は考えていた。

 でも、この期間も、神宮球場には確かに背番号《1》が存在していたのだ。雨の日も風の日も、大勝の日もボロ負けの日も、いつも神宮のグラウンドで、常に笑顔とともに懸命にダンスを披露していた背番号《1》がいたことに、どうして僕は思いを馳せることがなかったのか? 僕は拙著、『いつも、気づけば神宮に 東京ヤクルトスワローズ「9つの系譜」』(集英社)において、「背番号《1》の系譜」という物語を書いた。執筆当時はまったく頭になかったけれど、僕の目の前にいる彩友さんもまた、「背番号《1》の系譜」に連なる大切な存在だと、遅ればせながら気づかされた。改めて、彩友さんは言う。

「8年間ずっと背番号《1》だったので、この番号にはとても思い入れがあります」

彩友さんもまた、「背番号《1》の系譜」に連なる大切な存在だった ©長谷川晶一

 インタビューの最後は、みんなへの感謝の言葉が続いた。

「スワローズファンの方は、いつもとても温かく私たちを見守って、そして応援してくれました。歴代の監督、コーチ、選手のみなさんが、日々チームのために熱いプレーを見せてくれ、逆に私自身も大きなパワーをいただきました。そして、歴代のPassionメンバーたちにもとても感謝しています。つばみちゃんは私にとって、もはや『相棒』というべき存在です。関係者のみなさんにも、本当にお世話になりました。とても楽しかった8年間でした。本当にどうもありがとうございました!」

 彩友さんのいないPassionの19年シーズンが始まった。現在のメンバーにも、それぞれ背番号が与えられているが、背番号《1》は空白のままだ。それが、前任者である彩友さんに対する敬意の表れなのかどうかは、僕にはわからない。今後はMCなど、「しゃべる仕事を中心に活動していきたい。そしてまた野球やスワローズに別の形でかかわりたい」と、彩友さんは言う。もうひとりの背番号《1》である彩友さん、8年間どうもありがとうございました。彼女の第二の人生に多くの幸せが訪れますように。今度は、僕らファンが彼女にエールを送る番だ。

19年シーズンのPassion、背番号《1》は空白のまま

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