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「万葉集という選択は自分でも思いきったなと」新元号発表後の発言に見る安倍首相の“思い入れ”

改元後、支持率が急上昇

2019/04/05

 4月1日、新元号が「令和」と発表された。安倍晋三首相は記者会見のほか、さまざまなメディアを通じて、元号に込めた意味や期待などを繰り返し発信した。安倍首相のメッセージから何が読み取れるのか考えてみたい。

安倍晋三 首相
「歴史上初めて国書を典拠とする元号を決定しました」

首相官邸ホームページ 4月1日

 安倍晋三首相は4月1日12時過ぎより首相官邸で記者会見を開き、新元号「令和」の出典が「万葉集」にある歌の序文「初春の令月にして 気淑(よ)く風和(やわら)ぎ 梅は鏡前の粉(こ)を披(ひら)き 蘭(らん)は珮後(はいご)の香を薫(かおら)す」から二文字をとったことを明らかにした。「万葉集」については「我が国の豊かな国民文化と長い伝統を象徴する国書」と説明している。

 元号は、これまで確認できる限りすべて中国の古典から選ばれていたが、安倍首相はかねてから「元号の出典は日本で書かれた書物がいい」と明確な要望を口にしていた(日テレNEWS 3月1日)。「国書」を選んだのは安倍首相の強い意向と考えていいだろう。

「令和」は日本由来と言えるのか?

新元号について会見する安倍晋三首相 ©時事通信社

 とはいえ、「令和」が日本独自の言葉というわけではない。岩波文庫編集部の公式ツイッターは「新元号『令和』の出典、万葉集『初春の令月、気淑しく風和らぐ』ですが、『文選』の句を踏まえていることが、新日本古典文学大系『萬葉集(一)』の補注に指摘されています」とコメントした(ツイッター 4月1日)。

『文選(もんぜん)』とは中国の美文を集めた詩歌集で、6世紀に成立したもの。7~8世紀の遣隋使・遣唐使が持ち帰り、文章をつくる上での最高の模範とされた。歴史学者で東京大学名誉教授の保立道久氏も「『仲春の令月、時和し気清らかなり』(張衡『帰田賦』文選15)が原型。漢文からとらず『日本の古典』からとったと主張するは奇妙な話である」と指摘した(ツイッター 4月1日)。

 中国哲学の宇野茂彦・中央大名誉教授は「日本の文化というのは漢籍に負うところが非常に多い。文化に国境は無い。漢籍を異国の文化だと思わないでほしい」とコメントしている(毎日新聞 4月1日)。