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駅の伝言板、切符を切る駅員さん……平成の間に鉄道から消えたもの――新・令和の時代

2019/04/28

genre : ライフ, 社会

「灰皿」も消え、「白線」も消えた

 自動改札機は関西では早くに導入されていたが、首都圏では多くの鉄道が相互に乗り入れていることや国鉄の赤字、合理化への抵抗などにより導入が遅れたという(注3)。一方で民営化後のJR東日本は駅の近代化を進め、平成2(1990)年には山手線で自動改札機の本格導入がおこなわれた。その後の平成3(1991)年の磁気式プリペイドカード「イオカード」、平成13(2001)年のICカード「Suica」導入により、我々の平成年間における改札口での行動は「切符を駅員さんに渡す(あるいは定期券を見せる)→カードを自動改札機に通す→カードを読み取り部にタッチする」と目まぐるしく変化した。これからの新時代、我々は新たな身体能力を身につけることも覚悟しなければならない。

 続いて駅のホームで列車を待つ。平成の初めにはホーム上に「灰皿」があり、たまに無理矢理ねじ込まれた紙屑に火が移ってモクモク白煙が上がっていた。ところが受動喫煙防止の取り組みが周知されるようになり、平成15(2003)年には健康増進法が施行されたこともあって、関東の大手私鉄9社は2000年代前半には駅の全面禁煙を実施した。JR東日本でも平成21(2009)年から首都圏の一定エリア駅構内での全面禁煙を実施、ホーム上の喫煙所も撤去されたのである。

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 列車到着のアナウンスが流れる。「黄色い点字ブロックの内側までお下がり下さい」。あれ、これも平成初めには「白線の内側」だったような…。平成12(2000)年に施行された「交通バリアフリー法」に基づき、1日5000人以上の乗降客がある駅は平成22(2010)年までに視覚障害者誘導用ブロックを設置する基本方針が示されたことで、東京近辺の多くの駅ホームに点字ブロック設置が進められた。白線の内側に下がって立っていれば、点字ブロックを塞いでしまうことになる。いつしかホームから白線は消え、点字ブロックがホームの安全ラインの役割を果たすことになったのだ。