「諦めずにやってきてよかった」

 4月21日のヒーローインタビューで、そう話した釜田佳直選手の目にはうっすら涙があった。2011年の秋、ドラフト2位で指名を受けて金沢高校(石川)から楽天イーグルスに入団した8年目の本格右腕である。

 ルーキーイヤーの2012年は20試合に登板し7勝をマーク。しかしその後2013年に疲労骨折、2014年にはトミー・ジョン手術を受ける。翌年2015年8月29日に716日ぶりに勝利を収めるも、2018年6月に右ひじと右肩へ再度メスを入れる事になった。そんな釜田選手が手術後のリハビリ期間を乗り越え、655日ぶりに1軍のマウンドで待望の復活勝利を手に入れた。

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 苦しい期間を乗り越えた今の心境が聞きたくて試合後に釜田選手に直撃インタビューをさせてもらった。

復活登板で勢いのある球を投げ込んだ釜田選手 ©RakutenEagles

リハビリをともにした先輩・美馬から学んだこと

河内「久々の勝利、今の素直な気持ちを聞かせてください」

釜田選手「ずっと、ゲームで投げることを求めて厳しいリハビリをやってきたので本当に自分のやりたいことをマウンドで表現できたかなと思います」

 前日に美馬学選手が勝利し、ヒーローインタビューで「(一緒に)リハビリを頑張ってきた釜田が明日投げるので沢山の応援宜しくお願いします」と言っていたことを釜田選手に伝えると、「丁度、自宅で妻とそのインタビューを聞いていて、これは絶対頑張らないといけないと2人で話していました」と語った。

河内「リハビリをともにした美馬選手から学んだことは?」

釜田選手「お互い手術をしてリハビリが大変な中で、美馬さんが明るくポジティブにやっている姿を見て、こういう風にやらないといけないなと思いました。どうしても暗くなりがちになってしまうのですが、元気出してやらないと1日がもったいないと感じるようになりました」

 先輩・美馬選手の背中を見て教わった事は、釜田選手の考え方や行動に大きくプラスに働きかけ、自身も常に上を向いてやってきたからこそ、きっと野球の神様は見放さなかったのだろう。

 そして「諦めずにやってきてよかった」という言葉の真意について聞いた。

釜田選手「今回は何度も諦めそうになったんです。でも皆に支えられてきたという思いは前のリハビリの時よりも強く感じていましたし、諦めていたらこの場に絶対に返ってこれていなかったので、本当に諦めなくて良かったです」

 周囲の支えがあって掴んだ勝利を、感謝の気持ちを忘れずに謙虚に話してくれた。