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ファンから批判を浴びる巨人ドラフト戦略 “今年の目玉“佐々木朗希を指名すべきか

文春野球コラム ペナントレース2019

2019/05/14

 ――巨人のドラフトはクソだと思いませんか?

 口さがない巨人ファンから、何度かそんな感想を求められて返答に困ったことがある。

 私は巨人を取り巻く現役ファンと元ファンの生態を調査するというライフワークがある一方、ドラフト会議にまつわる取材をしているライターだ。現役巨人ファンのなかには「選手は好きだけど、球団(フロント)は好きではない」という人が驚くほど多い。だからだろうか、近年のドラフト戦略について、辛辣な人が多いように感じる。

 たしかに巨人が4年間もリーグ優勝から遠ざかっている一因は、ドラフトにあるだろう。セ・リーグ3連覇を成し遂げた広島や、パ・リーグで存在感を放つソフトバンク、西武、日本ハムといった強豪の共通点は、ドラフトで指名した好素材を着実に育成していることにある。

 ただし、個人的には近年の巨人のドラフトが悪いとは思わない。編成のトップがコロコロ変わるという問題点はあるにせよ、最近では岡本和真や吉川尚輝のようにドラフト1位から新たなスター候補にのし上がった若手がいる。

 不動の4番に君臨する岡本は言わずもがなだが、腰痛で離脱中の吉川尚にしても、スピード感満点の走守は「入場料を払った価値がある」と思わせるだけの魅力がある。

木佐貫スカウトの背中に「プロの仕事」を見た

 さらに過去3年のドラフト1位を振り返ってみると、最初の入札は田中正義(創価大→ソフトバンク)、清宮幸太郎(早稲田実→日本ハム)、根尾昂(大阪桐蔭→中日)。巨人はその年の「目玉」に勝負にいっている。「骨太なスターがほしい」という、球団の攻めの姿勢は感じ取れる。ただ、圧倒的にくじ運に恵まれていないだけなのだ。

 競合を避け、確実に単独指名できる選手で勝負すればいいという考え方もある。だが、私は巨人という球団は「わかりやすさ」にこだわるべきだと思っている。野球はくわしくないけど、清宮の名前は知っている。そんなライト層にも響くチーム。今や死語になった感さえあるが「球界の盟主」を自任するなら、誰もがわかりやすい国民的スターをスカウトすべきではないか。

 アマチュア野球の現場を回っていると、照る日も曇る日も球場に通うスカウトという職分に敬意を表さずにはいられない。とくに昨年までスカウトを務めていた木佐貫洋さん(現ファーム投手コーチ)は、いつ球場で見ても背筋をピンと伸ばし、じっと試合に見入っていた。情報提供者への丁寧なお礼の言葉も欠かさなかったと聞く。木佐貫さんを見るたびに、「こんなに熱心に見極めている人にスカウトされる選手は幸せだな」と感じていた。奮闘する現場スカウトの姿を見ると、早く報われてほしいとすら思う。

 また、ドラフトはあくまで「入口」に過ぎない。若手が台頭しないからといって、すべてドラフトに責任を押しつけるのはお門違い。入団前の「ドラフト」と入団後の「育成」はセットで語られるべきなのだ。そのなかで3軍制を復活させ、育成枠出身の増田大輝、松原聖弥、坂本工宜といった変わり種の雑草が少しずつ力をつけているのは、いい兆候といえる。

巨人がドラフト1位を早期公言すべき3つの理由

 潮目が変わりつつあるなか、今秋のドラフト戦略をどう考えるべきか。ひとつ、巨人に提案したいことがある。それは1位指名選手を早々に公言することだ。

 近年の巨人は、ドラフト直前まで1位指名選手を熟考する傾向にある。現場の要望を聞きつつ、ギリギリまで力量を見極めることも大事だろう。だが、かつては2009年の春先に長野久義(現広島)の1位指名を公言した前例もある。

 早めの公言はいくつかのメリットがある。ひとつは、是が非でもその選手がほしいというアピールになること。

 他球団に先がけて公言すれば、大きく報道される。公言された選手は球団に親近感を覚えるものだし、チーム内やファンに向けて球団のビジョンを広めるチャンスになる。過去3年は公言するタイミングが遅すぎて(16年、18年は会議前日、17年は公言せず)、目玉選手を指名した記憶さえ薄れているファンもいる。

 また、巨人が公言することで、競合を嫌う他球団への牽制にもなる。最終的には抽選のため、運を天に任せるしかないが、少しでも確率を高めるには競争相手を減らすしかない。

 そして最後、これは精神論になるが、「球団の悪い流れを変える」という側面もある。3年連続の抽選外しに象徴されるように、近年はドラフトの悪い流れが続いている。また、2011年の「清武の乱」以降、野球賭博問題など、暗い話題が続いたことで球団周辺には萎縮ムードが広がっている。そうしたすべてがドラフト1位の早期公言で払拭できるとは思わない。だが、負のスパイラル脱却への第一歩になるのではないか。