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6歳の息子をドラゴンズファンにしたい ごみ清掃芸人のチャレンジの記録

文春野球コラム ペナントレース2019

2019/06/01
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目に見えているものが全てではない

 それでも、滝沢家にとってはひとつの収穫があった。レフトスタンドの盛り上がりの中で応援していたおかげなのか、僕の姿を見た娘が次のイニングから一緒に応援し始めたのだった。

 2歳なのに意外と応援というものをわかっている。まだおぼつかないが、一緒にアイアイと言う。9回、1点を返してレフトスタンドが「燃えよドラゴンズ!」の大合唱に包まれる中、娘はまだバンザイとは言えないながらも皆と一緒に両手をあげていた。

 妙に感動している間に、堂上がダブルプレーとなり、試合終了。溜め息で包まれたレフトスタンドの中、息子は「終わった? 帰る? ねぇ帰る? 早く帰ろう」と今日初めての笑顔をみせた。やっとヒカキンに会える喜びを噛みしめている。憎たらしいとも思うが、仕方がない。そう簡単にドラゴンズファンになるものではない。千里の道も一歩から。

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 しかし計算外の収穫もあった。娘がドラゴンズファンになりそうだ。今度は娘と2人で観戦しに行ってもいいな、と思い帰宅した。

6歳になった息子と2歳の娘を連れて東京ドームへ ©マシンガンズ滝沢秀一

 しかし、その4日後、息子が不思議なことを言い出した。

「また野球に行きたい」

「え? もちろん、いいよ」

 僕は内心、不思議で仕方がなかった。あれだけお地蔵さんのような無表情を貫いた野球観戦のどこが面白かったのだろうと思ったが、口には出さなかった。息子は色々聞かれると拒絶反応を起こすので、深追いはしなかった。

 何かが息子の琴線に触れている。僕は嬉しくなった。目に見えているものが全てではないのだなと思った。

 息子の中で何かが楽しく、もう一度行きたいと思わせる何かがあった。雰囲気という口では表せないものかもしれないし、プロ野球選手に何かカッコいい仕草があったのかもしれない。はたまた唐揚げが美味しかったのかもしれないし、家族でどこか出掛けるのが楽しかったのかもしれない。

 はっきり言えることは、彼の中で何かが動いたことは間違いなかった。

 人の気持ちは水面下に様々な思いを抱えているものだから、何が動いたか僕にはわからないが、きっと近いうちにまた家族でドラゴンズ戦を見に行こうと思った。

 その時は、ドラゴンズのあの日の負けの水面下で、選手達が奮起したり、何かを掴んだりして、僕らの目には見えていない何かが培われ、あの負けの試合が意味を成す日が来てくれることを期待して、また球場に行きたい。

 ちなみに妻は息子がまた野球行きたいと言い出したのは、勝ったらジオウのベルト買ってくれると思っているんじゃない? と言い出した。うーん……痛い出費だが、ドラゴンズファンになってくれるなら何とか頑張ろうと思う。

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