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ヤクルト16連敗で思い出す、『スクール☆ウォーズ』第8話「愛すればこそ」のこと

文春野球コラム ペナントレース2019

2019/06/02
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16連敗中の今、思うこと

 ……さて、ヤクルトである。「文春野球コラム」と銘打ちながら、1500字近くも、ラグビーの、しかも35年も昔のテレビドラマのことを書き続けている理由――賢明なる読者のみなさんはすでに察してくれているだろう。5月14日から始まった大型連敗。ヤクルトにとっての屈辱的な日々が続いている。何をしても楽しくない。常に鬱屈した思いを抱えながら過ごす毎日。精神衛生上、実に辛い毎日が続いている。

 こうした辛く苦しい経験はかつてもあった。大型連敗が続くたびに、僕はしばしば『スクール☆ウォーズ』のことを思い出していた。まるで、自分が滝沢先生になったかのごとく、ヤクルトナインに対して、「あなたたちは本当にプロなのか?」とか、「プロとして恥ずかしくないのか?」とか、「こんなに負けてばかりで悔しくないのか?」と思っていた。相手エースに手も足も出ずに完封負けでも喫すれば、滝沢先生のごとく「お前たちはゼロの人間か?」と不満を抱き、下手をしたら、選手たちにグーパンチを繰り出しかねないほどの怒りを抱えていた。

 しかし、現在の僕の心境はかつてとはまったく異なる。もちろん、今でもふがいない敗戦が続けば悔しいし、不満や愚痴も出てくる。けれども、僕はすでに知っている。ヤクルトナインが決して「ゼロの人間」でないことを。決して悔しさを感じていないはずがないということを。先発投手陣がまったく試合を作れずに早々に降板することで、中継ぎ陣に過度の負担が生じている。この現状に対して、責任感の強い石川雅規が何とも思っていないはずがない。あるいは、得点機に凡打した青木宣親が、悔しさを感じていないはずがない。そうでなければ、アラフォーの元メジャーリーガーが自ら二厘刈りにするはずがない。

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 プロ野球選手にインタビューをしていると、公表されていない故障や、疲労による体調不良の現実を知ることも多い。ある投手の右腕に刻まれた無数の手術痕。あるいはユニフォームの下に隠されたおびただしいテーピング。ゲンをかついでいつもと違うルートで球場入りをしたり、アクセを変えたり、選手たちは見えないところで、人知れず迷い悩み、戦い続けているのである。

 連敗が続くと、ファンの中からさまざまな意見が出てくる。早くも「小川監督更迭論」を表明する人もいるし、特定の選手の名前を挙げて「戦犯」呼ばわりする人もいる。あるいは選手起用や采配に疑問を呈する人もいるだろう。その一方で、「私たちのできることは、ただ応援するだけ」と見守り続ける立場をとる人もいる。野球の見方、ファンのあり方は、人それぞれだ。だから、それぞれの立場があっていいと思う。

 僕の場合で言うならば、かつては「悔しくないのか?」「お前たちはゼロの人間なのか?」と不満だらけの立場をとっていた。でも、今は違う。連敗が続くことの悔しさや苦しさはかつてと変わっていないけれども、選手たちこそ僕の何倍も、何十倍も悔しく、屈辱的な思いを胸に抱いていることを知っているからだ。ヤクルトの連敗はセ・リーグ記録の16まで伸びている。相手も同じプロである以上、こうした辛い現実は起こり得る。そんなとき、僕にできることは球場に足を運び、ただただ応援することだけなのだ。そんなことしかできない自分がもどかしい。それでも、やっぱり神宮に通うことしかできない。辛く苦しい5月が終わった。ツキが変わる6月の到来。昨年の再起のきっかけとなった交流戦での復活劇を信じて、僕はこうしてキーボードを叩き続けている。……それにしても辛い。

6月1日、DeNAに敗れて16連敗 セ・リーグ記録に並んだ

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