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顧問をしているサッカー部ではイライラして怒ることも

 栄光学園から東大に進学し、母校に就職。30歳で「授業の職人になる」と決めた。40歳で、「授業人として飛び回りたい」と思った。自分の信じる授業を世に発信しようと決めたということだ。そして50歳。いまの心境は「どんな子どもを見ても心の底から『魅力的だなぁ』って思えるようになりたい」ことだと言う。

 イモニイでもまだときどき、負の感情を抱くことがあるというのは意外だった。長年取材しているが、イモニイのそんなところを私自身は見たことがないからだ。本人も、「授業のなかで怒鳴ったりってことは、もうまったくないですね」と言う。

「たぶん、栄光学園に入ったときといまを比べたら、かなり進歩していると思います。新米のころは、生徒の言動を『許せない』と思ってしまったこともあったと思うんですよ。毎週のように通っている児童養護施設の子どもたちにしたって、かわいいことばっかり言うわけじゃないじゃないですか。ときどきホントにひどいことを言われたりするけれど、一度関係ができちゃうと、本当は自分を見てほしいだけなんだなとわかるからイライラしない」

児童擁護施設での学習支援や海外での教育支援にも継続的に関っている
学校の長期休暇のたびにセブ島に渡り、貧困地域の小学校で教える

 でも顧問をしているサッカー部では、まだ未熟なところが出てしまうことがあると告白する。

「勝利至上主義とかそんなことは全然ないんですけれど、つい熱くなってしまうことがあります。ときどきイライラが抑えられなくなって、怒っちゃうんですよね……」

 教室とフィールドの違いは何か。

「僕、サッカーの経験はないんです。技術的なこととか戦術的なこととかは自分なりに勉強しましたけれど、やってみせることができない。だから基本的にサッカーには自信がない。それでも、できない生徒たちを目の前にして『できるようにしてやらなきゃ』という“責任感”が強くなると、今度は彼らをコントロールしたくなっちゃうんです。それでうまくいかないと、イライラしちゃって、つい怒ってしまうことがある」

 ということは、いまイモニイが教室のなかで小言を言ったり怒ったりしなくなったのは、年をとって人間的に丸くなったからでもアンガーマネジメントを身に付けたからでもなく、数学教師としての技術に自信がもてたからだ。技術的な裏付けなしに、聖人のようには振る舞えないのである。